『造形集団 海洋堂の発想』

宮脇修一『造形集団 海洋堂の発想』(光文社新書 2002)を読む。
海洋堂チョコエッグのおまけで一躍有名になった模型メーカーである。模型メーカーというと一般に下請けの零細企業や外部の職人と契約し、自社のブランドで販売するといったイメージが強い。しかしこの海洋堂はアメリカのピクサー社のように、それぞれの専門に対するプライドを持った芸術家を抱える工房である。
芸術家の集まりなので、経営戦略などは二の次で、こだわりの仕事を優先にする会社である。手塚治虫のマンガやエヴァンゲリオンなどの二次元のキャラクターを三次元のモデルにするだけの、結局は模倣にすぎない模型の世界であるが、単に二次元キャラの寸法や配色をそのまま造形として立体化しても本物の質感は出ない。本物以上に本物らしくするために、コンマ数ミリ単位の微調整が必要なのである。パソコンでほとんどが作られてしまうアニメやマンガの世界と、コンピュータで細かいディテールまで削り出してしまう模型の世界を橋渡しするためには熟練と勘が冴えた職人の技が求められるという点が面白かった。

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