『社会福祉士まるごとガイド』

 日本社会福祉士会『社会福祉士まるごとガイド』(ミネルヴァ書房 2001)を読む。
 社会福祉士になるための学校の紹介と仕事が概要が分かりやすく書かれている。社会福祉士は単なる福祉従業者ではなく、「社会」の福祉士と名付けられている。その点について以下のように説明を加えている。

 社会の中で孤立したり、日常生活の営みが困難な人々、精神的・肉体的ハンディキャップを抱えている人をはじめ、すべての生活している人たちに対し、社会福祉専門職の手による科学と専門性をもって、生活の再編や、よりよい生活の実現のために活動することを、ソーシャルワーク、あるいは社会福祉援助活動といいます。「ソーシャル」(=社会の)という表現を使うのは、その人それぞれが直面する問題を個の問題としてだけではなく、社会の枠組みの問題としてもとらえ、社会的自立をめざして援助を行う点を特徴としているからです。それは人間を身体的・心理的・社会的な面の総体として理解して、人間と人間との関係、人間と社会の関係を調整し、その人の日常生活を支援していく行為です。

 福祉という極めて個人的な、また家族的な問題を「社会の枠組み」として捉えることは口で言う以上に難しい。北欧の社会福祉政策は、「神の下の平等」という宗教的なテーゼから始まった慈善事業が土台となっている。それが民主主義の進展とともに、「法の下の平等」という近代国家の基本原理に再編され位置づけられてきた。しかし、日本では民主主義そのものが未成熟のため、障害者や高齢者、野宿者といった者たちの人権を制限する政策をとってきた。そのために、社会的な観点から差別抑圧の問題に取り組むこと自体が異端視されてしまう傾向にある。しかし、社会という視点を外れてただチャリティ的に問題に取り組んだのでは何の解決策も生み出さない。

 先日、日本社会事業大学のパンフレットを取り寄せたのだが、その表紙の宣伝文句に「支え合い、分かち合い、社会を変える そんなソーシャルワーカーの養成をめざします」とあった。福祉切り捨てをごり押しする小泉政権下において、社会福祉士には社会を「換える」ぐらいの気概が求められているのかもしれない。

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