「大波小波」

本日の東京新聞夕刊の匿名コラム「大波小波」を興味深く読んだ。短い文章であるが、小論文としてお手本になるような小気味よいくらいの勢いで切り込んだような論理展開だった。

中国製冷凍ギョーザの中毒事件は、低価格を競う無制限な市場競争の制度疲労が現れたと言えよう。百円ショップの棚を見なさい。手間かけた中国製ざるやスリッパが並ぶ。流通経費が入ってこれだから、現地労働者の手取り賃金はいかばかりか。輸入国による植民地的収奪である。
本紙で清水美和論説委員はギョーザ事件について過酷な待遇に抗議する現地労働者の破壊活動説を示唆していた。本来、外国企業が進出したり、生産を委託したりして生じる雇用で現地労働者の生活は向上するはずである。ところが、賃金が上がると、企業は再び安い賃金を求めてよそに行きかねない。企業を引き止める過酷な労働はいつまでも続くことになる。
その賃金競争が日本にも還流して名だたる大企業が国際競争力維持を理由に不法な派遣労働、偽装請負、名だけの管理職といった労働力の買い叩きを行い、ワーキングプアーの土壌を支える。
一九九〇年代以降の国際的な競争政策はこうして内外の労働者に、低賃金をめぐるデスマッチを要求している。初期資本主義に先祖返りしたようなこの競争システムに歯止めをかけないと、安さの代償として深刻な事態が起きる気がする。

なにやらマルクスが『資本論』の冒頭、商品の流通過程から貨幣の流れ、そして労働力の本質を明らかにしていったように、ギョーザ−ギョーザのパッケージに空けられた小さな穴から進入した農薬であるが−という子どもでもつまむことができる小さな商品から、穴が空けられた背景に潜むグローバル資本主義の欠陥が抉り出している。

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