『生き地獄天国』

雨宮処凛『生き地獄天国:雨宮処凛自伝』(ちくま文庫 2007)を読む。
現在「週間金曜日」や赤旗、社会新報など多方面に寄稿する「ゴスロリ作家」雨宮さんのデビュー作である。彼女の中学校時代の壮絶ないじめ体験から始まり、高校時代の家出やビジュアル系バンドの追っかけの話、東京での浪人時代のリストカット、そして、バンド活動、右翼活動、サブカルイベントの主催など、次々の自分の活動のフィールドを広げてきた過去半生を振り返る。追っかけや右翼、宗教など、弱い自分の孤独を埋めるような熱狂するものに対する憧れや疑問、そして実際の体験を通して自分がどう変わったのか、雨宮さんは包み隠すことなく丁寧に語る。
柳美里さんのエッセーと似ているが、政治団体や宗教団体などの集団と個人の関係や、自身の経験からプレカリアートの問題を論じるなど、これからの多彩な活躍が期待される作家である。

 私は世界がどこにあるのかわからなかった。私だけが世界の仲間外れだと思っていた。こんな世の中どうやってシラフで生きていけばいいのか、見当もつかなかった。
 私はいかに手首を切らずに、そして今よりはマシな精神状態で生きていけるかってことを追求して、依存を繰り返していただけだ。そして、その果てに今、生まれて初めて「本当の自由」の中に放りだされている。
 だけど別に、それはそんなに恐れるものじゃなかった。もしかしたら、私はずっとこんな状態を望んでいたのかもしれない。でも遠回りしなかったら、私の足は恐怖にすくんでいいただろうこともわかる。そう、思い切り遠回りして、そしてジタバタしまくれば道は開ける。そのことを、私は身体で覚えてしまった。
 依存を繰り返して、私は世界の輪郭を掴むことができた。何もないここ、何もない自分から全速力で逃げようとして、時には自分を強く見せるために何かにすがって、どうにか一人で立てるようになった。

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