「チリ大統領選 決戦投票へ」

本日の東京新聞に南米チリの大統領選挙の途中経過が報じられていた。
チリは銅鉱の輸出が世界第1位で、経済的には一人当たりGDPが12,990ドルもある平均以上の国である。中南米の「優等生」とも評され、国際社会における評価も高い。

しかし、このチリですらコロナ禍で、昨年の経済成長率は-5.8%(2020年 IMF)となり、国内で格差が拡大している。世界的な傾向であるが、国内の経済的格差が露わになると、国民の内部に憎悪が生まれてしまう。そこで政府は国外に仮想敵を作って、スケープゴートにしようとする。チリは南米の中では安定しているので、政府が破綻しかけているベネズエラから難民が押し寄せている。こうした移民を国民の共通の敵であると設定し排撃することで、世論を形成しようとするのがトランプ流の政治手法である。

ちなみにベネズエラは人口が2,795万人(2021年)もいるのに、GDPは473億ドル(2020年)である。GDP成長率は-30.0.%(2020年)であり、物価上昇率は2,355.0%(2020年)にも達する。

もう一つの手法は、国内の経済格差を縮小するために、富裕層や大企業への課税を増やし、貧困層への「分配」を重んじる社会主義的改革である。しかし、経済成長と平等な分配の両立は、口で言うほど簡単ではない。チリの大統領選の投票結果でも、決選投票となったものの、格差是正を掲げる左派勢力よりも、治安対策を訴える右派勢力の方が上回っている。