『日本軍政下のアジア:「大東亜共栄圏」と軍票』

小林英夫『日本軍政下のアジア:「大東亜共栄圏」と軍票』(岩波新書 1993)を読む。
昨日の小林よしのり氏の『台湾論』だけでは情報が偏ってしまうと思い読んでみた。
戦前日本が現地通貨を強制的に日本政府が保証する紙幣である軍票に交換する暴挙を行い、現地の貨幣経済を混乱させた事実を丹念に描く。朝鮮半島や台湾については紙幅の都合で述べられていないが、当時の日本政府は、シンガポールやフィリピン、スマトラ、ジャワ、香港などで無計画な行財政を展開し、びっくりするほどのインフレを引き起こし、現地の人たちの生活基盤を破壊した。そして、「大東亜共栄圏」なるいんちきな標語で、日本が戦争を遂行するに必要な資源をアジア各国に求め、無理やりに産業構造を変えてしまい、戦後にまでその爪痕が残る結果となった。
確かに、一部台湾などでは経済がうまく回った例はある。それは歴史の事実として認めなければならない。しかし、アジア太平洋地域全体で見ると、やはり日本の無道な植民地主義が横行し、そうした事実をも丁寧に一つ一つ受け入れることが求められる。

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