『「名前」の漢字学』

阿辻哲次『「名前」の漢字学』(青春出版社 2005)を読む。

「人名用漢字」という戸籍登録に使える漢字のあり方を巡って、「法制審議会人名用漢字部会」での法務省の役人や最高裁との丁々発止のやりとりや、著者の感想や解説が分かりやすく述べられている。

そもそも「人名用漢字」とは、法務省の管轄であり、役所や学校で混乱をしないように名前に使える漢字に制限を加えることを目的として制定されたものである。「当用漢字」が制定された直後は92字しかなかったのだが、国民の要望や議員からの要請で徐々にその範疇を広げ、現在では常用漢字の異体字も含め九百数十字を数えるまでに至っている。

「人名用漢字」も「縦割り行政」の弊害を被っており、文科省と文化庁が管轄する「常用漢字」、経済産業省が管轄するコンピュータの共通漢字である「情報交換用漢字符号系」(JIS漢字)との間ですりあわせが行われてこなかった。そのため「昴」と「昂」の誤用や、「凜」と「凛」の字体の違いなどが生じ、「尿」や「病」といった字が使える一方で、「矜恃」といった良い意味の言葉が使えないなど、今後も世論の動向を鑑みながら改正が続きそうである。

阿辻氏は漢字の大家であり、もっと高齢の方かと思っていたが、

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