『先端医療革命』

米本昌平『先端医療革命:その技術・思想・制度』(中公新書,1988)を少しだけ読む。
80年代後半に話題になっていた脳死、臓器移植、人工臓器、体外受精、出生前診断、中絶と胎児、遺伝子治療といった先端医療と倫理を巡る問題について考察している。

ほとんど読んでいないが、ガン、心疾患、脳疾患が三大死因を占める国は間違いなく先進国であるという指摘は興味深かった。栄養不足や感染症が克服され、医学の課題の中心が急性疾患から成人病や遺伝病、先天異常といった慢性疾患へ移行した社会の証である。一方で、アフリカ地域の死亡原因は1位から、HIV/エイズ、下気道感染症、下痢性疾患、マラリア、脳卒中、早産による合併症と続き、多くの死因が感染症となっている。

医学の課題が急性疾患の時は生命倫理などは無縁である。病気から生命を守ることに対して議論はない。しかし、医学がより良く長く生きるための学問となってからは、患者の権利や宗教、文化、人生観が関わるようになり、根本から変わらざるを得なくなる。本書ではそうした医療思想革命が論じられているらしい。