安田元久『平清盛:権勢の政治家と激動の歴史』(清水書院,1971)を数ページだけ読む。
著者は学習院大学の学長まで務めた日本の中世史学者であり、本書も専門書に近い内容であった。
専門家の間でも平清盛の人物像の評価は分かれている。鎌倉時代の始まりが1192年ではなくなったように、古代から中世の転換をどこにおくのかで、平清盛の評価も分かれていく。著者は平清盛の評価の難しさについて次のように分析する。
清盛に対する歴史的評価の困難さは、また彼が作り上げたところの、いわゆる平氏政権の歴史的位置付けの問題とも関連する。平氏政権を古代的貴族政権のひとつと見るとき、それは古代の終焉をつげる苦悩の中に生まれたところの独裁政権であり、また王朝国家の没落を前にして咲いたあでやかな仇花ともいえる。平氏政権を、武家政権と見るとき、それはまさに新しい時代の先駆者であり、中世をひらく苦悩の前史をいろどる短命の政権とみることができよう。