中山公男『絵の前に立って:美術館めぐり』(岩波ジュニア新書 1980)をパラパラと読む。
著者は東京大学文学部美学美術史学科を卒業した研究者で、美術館館長や筑波大学、明治学院大学の教授を歴任している。中高生向けに日本の美術館に所蔵している近代ヨーロッパの作品を、時代背景や作者の経歴を交えて紹介している。ミレーやマネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、マティス、ピカソなど錚々たる名前が並ぶ。
作品の紹介以上に、これらの名画が大原美術館(岡山県倉敷市)やブリジストン美術館(現アーティゾン美術館)、出光美術館、ひろしま美術館など、民間の美術館に多数陳列されているという事実の方が驚きであった。バブル期に日本人による海外の美術作品漁りがニュースとなったが、果たしてどれくらいの日本人がこの名画を鑑賞できる眼を持っているのであろうか。