本日の東京新聞の夕刊コラムに、文芸評論家の加藤典洋さんのインタビュー記事が掲載されていた。
新刊評論『村上春樹の短編を英語で読む』(講談社)にまつわる春樹文学への評価が述べられている。その中で加藤氏の評論家の姿勢に関する次の言葉が印象に残った。
批評家と作家は会わない方がいい。作品が良くないときにはそう言わないといけない。
相手に申し訳ないという気持ちを忘れてはいけない。だから批評として誠実な対応をしているつもりです。手抜きをしないでしっかりと、何遍も読む。作者から「こんなことは考えてない」と言われても、はかりに載せるとこちらの言葉とつり合わないといけない。
批評は枠組みの中で考えるのではなく、新しい出来事にショックを受けて一回壊れ、今までの考えにも枠があったと気付かされる経験です。地図のないところからどういう枠組みを自分で提示していけるかが、問われていると思います。
特に、加藤氏の「相手に申し訳ないという気持ちを忘れてはいけない」という言葉が胸に響く。私も授業の中で、浅薄な知識を基に文学作品や作者についてしゃあしゃあと語っているが、果たして不遜な態度で向き合っていなかっただろうか。一つの作品を語る上で、その数倍の作品を読み、作者の経歴と時代状況を調べ、謙虚な姿勢で授業研究に勤しむ姿勢を加藤氏に倣って持ち続けていきたい。