「コロナ服飾不況 アジアに余波」

本日の東京新聞朝刊に、南、東南アジアの縫製労働者がコロナ不況によって、失業や賃金未払いの事態に追い込まれているとの記事が掲載されていた。

10数年前までは、繊維工業は中国が生産だけでなく消費においても大きな地位を占めていたが、近年は中国よりも人件費が安いベトナムやカンボジア、ミャンマーなどに生産拠点が移行している。バングラデシュでは衣料品製造が、年間輸出総額400億ドルの8割超を占める。記事では欧米のアパレルブランドの突然の注文キャンセルを取り上げているが、日本の企業も多数進出しているので、どこ吹く風と聞き流すことはできない。

地理の授業では「ウェーバーの工業立地論」で、こうした工業の立地や移転について学習する。アルフレッド=ウェーバーによると、多品種の商品が展開する衣服のように、多くの労働力が必要となる工業を労働力指向型工業と呼ぶ。人件費の節約のために、後発途上国を求めてどんどんと工場が移転していくため、現地で働く労働者は使い捨てとなりやすい。

歴史を紐解いていけば、明治から昭和初期にかけての日本も、絹織物産業が輸出の大半を占めてきました。機械の導入や農村地域の女性を集めることで、明治以降の産業革命を下支えしていましたが、1929年の世界大恐慌をきっかけに絹織物産業はズタボロになってしまいました。結局日本はその後満州に新天地を見出し、日中戦争へと転がり落ちていくことになります。記事にあるような南、東南アジアの経済不況が、地域紛争やテロへ繋がっていく畏れもあります。経済と政治は不可分のものであり、注視していく必要があります。