『わたしたちと裁判』

後藤昭『わたしたちと裁判』(岩波ジュニア新書 1997)をパラパラと読む。
中学生高校生向けに、具体的に刑事訴訟や民事訴訟の手順や、裁判所の紹介、法曹界の仕事など、丁寧に説明されている。
裁判は犯罪絡みだけでなく、国家や企業を相手に権利や地位を確定するための裁判や、契約や特許権などの民事に関する訴訟もある。著者は裁判が個人の生活だけでなく、社会全体の利益を左右する大切なものだと述べる。

「疑わしきは被告人の利益に」という格言で知られる無罪推定の原則は裁判だけでなく、日常生活や仕事でも意識しておきたい。

ここ一ヶ月ほど、検察官の政権与党による恣意的な定年延長が取り沙汰されてる。著者ははっきりと次のように述べる。

検察官には、ほかの公務員に比べると、かなりの独立性があります。これは、検察官が法律の専門職としての判断に従って事件を取り扱うことが期待されているからです。もし検察官がみんな直に法務大臣の指示を受けるとすれば、政権を握っている与党の政治家の犯罪を調べるようなことは難しいでしょう。じっさい、検察官が大物政治家の犯罪を摘発することもあります。