『なんにもないけどやってみた』

栗山さやか『なんにもないけどやってみた:プラ子のアフリカボランティア日記』(岩波ジュニア新書 2011)を読む。
短大卒業後,渋谷109のショップ店員を経て,貧乏バックパッカーとして世界を旅する中,エチオピアの施設でボランティア活動に従事した体験が書かれている。著者が働いていたのはエチオピアの首都アディスアベバにあるHIV施設で,結核や末期癌を併発する患者も多く,地獄絵図のような苦しみや家族との非情な別れの中で,同じ目線に立って共感し,交流を深めようと試みる。
栗山さんは次のように述べる。

 ボランティアについても色々な意見があると思います。
でも私は,自己満足でも,実は,ほんの少ししか役に立っていなくても,私がされる側の立場だったら,全然知らない人からでも,ほんの少しでも気にかけてもらえて,おはよう,今日は調子どうですか?って笑顔で声を掛けてもらえるだけでも,それだけでも,やっぱり嬉しいんじゃないかなってこと,たった一言話しかけられるだけで,ほっとしたり,あったかくなったりする気持ち,あるんじゃないかなってこと,エチオピアの施設で過ごして思いました。

栗山さんの直向きな思いは行間から伝わってくるのだが,エチオピアの施設で働くようになった経緯はすっぽりと省かれ,唐突に病死直前の患者との交流が描かれるも,どれくらいどのような形で働いたのかも触れられておらず,筆者の思いだけが先走っているような印象になっている。渋谷の109店員や世界旅行などのキャッチーな要素を詰め込もうとせず,作者の活動がシンプルにちゃんと伝わる工夫ができなかったのだろうか。