クーロン黒沢『裏アジア紀行』(幻冬社アウトロー文庫 2005)を読む。
カンボジア・プノンペンに住む著者が、「北斗の拳」の漫画に出てきそうなカンボジアでの荒れ果てた生活や、中国、ミャンマー、チベットなどを訪れた際の酒や猥褻、詐欺にまつわる裏話を語る。
「本当かいな?」と疑問符が頭を過るのだが、読みやすい文体で一気に読み終えた。チベットに関する文章が面白かった。言葉遣いは汚いが、それほど中国のチベット支配の悪汚さを表しているのだろう。
チベットを実効支配するのは、かの中国である。占領から50年以上が経過した今もチベット独立運動は鎮まらず、業を煮やした共産党はチベット全土に数十万の軍隊を置き、ついに首都ラサまで鉄道を引いた。
中国系メディアによれば、「鉄道建設には環境的にも最大の注意を払い、野生動物を驚かさないよう静かに工事を進め、チベットカモシカの繁殖期には4日間、工事を中断してカモシカに道を譲り、工事現場の周りに草花を植えました」だのなんだの、美談のオンパレード。母親がボケ始めたので高級老人ホームに叩き込んでやりました。月15万円も払う俺は最高の孝行息子……みたいな論理である。工事中はともかく、列車にも道を譲らせるつもりなのだろうか?
某中国系新聞が誇らしげに掲載した、鉄道開通後の想像図がこれまた凄かった。ポタラ宮の周りに悪趣味な中国風高層ビルが林立するラサの未来。いかれてる……。