横川和夫『仮面の家:先生夫婦はなぜ息子を殺したのか』(共同通信社 1993)を読む。
本棚の整理のつもりで、軽く読んで捨てるつもりだったが、じっくりと最後まで読んでしまった。
1992年6月に埼玉県浦和市で起きた大学を中退し家庭内暴力を振るっていた息子を両親が殺害したという事件のレポートである。浦和東、浦和西、蕨高校で教鞭をとり、部活動や教材研究に追われ、生涯一教師を実践した父親が愛する息子を殺害するに至った心境を察するに余りあるものがある。
前半は東大出身で埼玉県立高校において国語を教える父親や母親について、また被害に逢った長男の生育歴について詳細にまとめられている。後半は浦和の事件を担当した精神科医のコメントや、神奈川県横浜市で金属バットで母親に傷害を負わせた事件で家族療法にあたったカウンセラーの視点で事件の顛末が語られる。Amazonのレビューにもあったが、後半の診療所の宣伝のようなくだりや画一教育に問題の核心を求めようとする著者の分析がなければ良い本だったのにと思う。