本日の東京新聞夕刊に、男女の社会的役割が大きく分けられているインドで、「ヒジュラ」と呼ばれ社会の底辺で差別を受けてきた心と体の性が異なるトランスジェンダーの地位向上に向けた動きが生まれているとの記事があった。最高裁が2014年4月、トランスジェンダーについて「第3の性として人権があり、市民として平等に扱われるべきだ」との法的に認める決定を出し、政府に教育や雇用の面で配慮を求めたこともあり、性産業や物乞い的な収入しかなかったヒジュラが、音楽やタクシー業界に進出し地方議員にも立候補しているとのこと。
ヒジュラはこれまでアウト・カーストな存在として扱われてきた。しかし、近年下層カースト出身の大統領が続いたこともあり、差別解消の追い風になっているのであろう。
また、記事はインド最大の都市ムンバイ(イギリス支配時代はボンベイ)の話であった。数年前に観た映画『スラムドッグ$ミリオネア』で描かれたように、ムンバイ郊外にはスラム街が広がる。そうしたスラム街にヒジュラが集団で生活しているという。そして、またそうした雑多な空間から自由が生まれようとしている。ふと、中世ドイツに「都市の空気は自由にする」との諺があったことを思い出した。
ヒジュラ
インドなど南アジアでみられる第3の性。インドのカジ・ナズルル大(西ベンガル州)の研究などによると、インド国内に約500万〜600万人が居住。男児や性別がはっきりしない子供らが自ら希望するなどしてヒジュラの共同体に加わり、女性の衣装を着用して結婚式や新生児誕生などの祭事で歌や踊りを披露。ヒジュラは呪いを起こすとも信じられている。紀元前から王宮などで活動し、ムガール朝でも重用された。教育を受けず、社会から疎外されている例が少なくない。