司馬遼太郎、ドナルド・キーン対談集『世界の中の日本:16世紀まで遡って見る』(中央公論社 1992)を読む。
ページをパラパラとめくっていたら、「シーボルト」や「ギルダー」という言葉が目に入ったので、西洋史の勉強の一環として手に取ってみた。
歴史作家の司馬遼太郎氏と、江戸文学研究家のドナルド・キーン氏が、江戸時代から明治時代にかけての言葉や文学、宗教、思想、芸術などについて自由奔放に語っている。両氏とも勉強家なので、対談といえどもそのまま一冊の文化論になるほどまとまった内容となっている。西洋における「絶対的」ものを日本人がどう理解してきたかという話が特に興味深かった。
私たち現代人は、江戸時代というと格式や鎖国、封建制でガチガチに固められた否定的な側面を思い浮かべてしまう。しかし、江戸期の日本は当時世界でも類を見ないほどの識字率を誇り、庶民でも読み書き算盤を習い、本を読む習慣がある一流の教育国であった。司馬氏は、二宮尊徳や石田梅岩といった心学者に倣い、頑張って自分の生活を向上させようという勤勉の精神や自立の精神があったと指摘する。さらに、勤勉に一所懸命に働けば何とかなるというプロテスタントに似た考えがあったから明治を可能にしたと述べる。