不完全雇用均衡
Keynesは仏語の『一般理論』の序文の中で,「総所得,総利潤,総産出量,総雇用,総投資,総貯蓄といった全体としての経済システムの動きである」と述べ,ミクロな動きではなく,マクロな視点を前提とする経済学を打ち立てた。古典派の雇用理論は完全雇用均衡の特殊状態を想定しているが,Keynesは財市場の均衡と労働の不均衡という不完全雇用均衡論を展開した。不完全雇用均衡とは,失業現象を,期待の外れに基づく市場の不均衡現象としてではなく,市場の自然的な諸力がその効果を発揮し尽くしたもとで成立する均衡状態とみなすことである。
非自発的失業
Keynesは,賃金が納得できず働く意思がないために就業しない「自発的失業」や,転職の合間にあって就業していない「摩擦的失業」の2種類だけでは,1920年代から続く英国の高失業率は説明できないと考えた。そこで,「供給はそれ自らが需要を作り出す」とした「セイの法則」を否定し,労働供給が減っても雇用の需要は増えているという点に注目した。つまり,物価が上昇して,実質賃金が低下しているにも関わらず雇用量が増えるという状況においては「非自発的失業」が生じているとした。
有効需要の原理
keynesは,雇用量N人とそれから生じる生産物の総供給関数をZ=φ(N),雇用量N人とその生産物の販売から予想される総売上金額をDとする時の両者の関係を総需要関数D=f(N)と表した。そして,ある雇用量のもとで,D>Zであれば,企業は両者が一致する点まで雇用量を増加させる。逆にD