山口修『この一冊で「中国の歴史」が分かる!』(三笠書房 1996)を読む。
元は山川出版社から刊行されていた単行本が文庫化されたものである。
現在深夜3時を回っている。4時間近くかけて、地図を片手に一気に読んだ。
仰韶文化・竜山文化の古代中国文明から秦漢の統一、「三国志」、南北朝時代、隋唐の統一、宋朝、元朝、明朝、清帝国、西欧列強との戦争、中華民国、中華人民共和国まで7000年近くの時代を一気に概観したことになる。教科書に近い読みやすい文体で、裏話も豊富に掲載されており、中国史の入門書としてはうってつけの一冊である。現在でも体裁を変えつつ版を重ねているようだ。
20年前の受験のときに懸命に覚えて以来全く目にしていなかった、明朝末期の「一条鞭法」や「鄭和の大遠征」、康煕帝と乾隆帝に挟まれた「雍正帝」などの単語に懐かしさを感じた。
また、1920〜40年代の国民政府と共産党の内戦であるが、高校時代や浪人時代に勉強したときは「内戦」という言葉が示すように、中国人同士の方針の違いから生じる衝突だと思い込んでいた。しかし、日本の敗戦前から、蒋介石率いる国民政府軍には米軍の兵器が供給されており、ソ連軍が後押しする共産党との代理戦争という側面があったのだ。1970年代、80年代のアフガニスタン紛争と同じ構造の戦争がすでに始まっていたのである。アヘン戦争以降のヨーロッパの帝国主義国家と清朝時代の中国の対立に日本が食い込んで泥沼化したという表面的な見方だけでなく、真珠湾攻撃のかなり前から米国の思惑が深く絡まっており、水面下で冷戦構造が早い段階から形作られてきた点を見逃してはならない。