『場末の酒場、ひとり飲み』

藤木TDC『場末の酒場、ひとり飲み』(ちくま新書 2010)を読む。
フリーライターの著者が、東京都内をあちこち出歩き、得意分野でもある昭和の面影を探しに出かける。
タイトルにもある「場末」について、著者は次のように述べる。

ロードサイドの家族向け大型店と「場末」の概念はまったく相反するものだ。
ロードサイド店には笑顔あふれた家族が自家用車でやってくる感覚があるが、「場末」は孤独な男、それも徒歩で、無粋なしかめっ面の中年が訪れるというイメージだ。ロードサイド店は必ずや豊かで建設的な幸福感を世界観として抱えているが、「場末」はどこか破滅的で不幸せな翳りがある。

そうした「場末」を求めて、都営新宿線瑞江駅、大田区六郷土手付近、舎人ライナー舎人駅、そして究極の場末である東武線鐘ケ淵駅周辺まで足を延ばす。著者は、「場末」を求める心根には、孤独の時間に酔う静寂な空間と時間を希求する人間性があると述べる。再開発やチェーン店の進出などで、「場末」な酒場は姿を消していく一方であるが、「場末」のカウンターで自分と向き合う時間は、今後ますます価値を高めていくであろう。

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