広瀬隆『FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』(朝日新書 2011)を読む。
2011年5月に緊急に刊行された作品で、福島原発の危険性や浜岡原発、その他の原発の危険性について、技術的な欠陥や原発の付近を通る活断層など、具体的なデータや地形図から分かりやすく説明されている。プレートの境界に位置する地震国火山国の日本で、特に活断層が疑われる地域に原発を集中して建設する危険性がよく伝わってきた。産業も観光資源もない「弱者」である過疎地域に、地域外の電力会社が原発を設置する政治のあり方に腹が立った。原発や公害、基地の問題は、この国の歪みを象徴している。
また、インターネットでは沖縄のニュースも原発の問題も「手に取る」ように分かるが、活断層一つとってもその距離や大きさは実際に地図を広げ、現地を見て、土地柄を見ないとそのリアルな実感は湧かない。世の中が諸事情がすべて画面で表示されるようになったが、こうした広範囲に渡る問題を俯瞰するには、その実際の大きさや距離感から物事を思考する「地理的発想」が求められるのではないか。