『女たちが築いた生保王国』

堀江誠二著『女たちが築いた生保王国』(TBSブリタニカ)を読んだ。
1988年のバブル華やかりし頃の作品で、生保レディの苦行が刻々と綴られていた。生命保険というのはある意味人が元気に生きていく活力の「担保」のような商品である。その商品を売るために営業員が骨身を削って、家族を犠牲にしながら仕事にのめり込んでいくというのはまさに皮肉である。他社を蹴落とすためにあらゆる手段を講じてきた生保レディーは現在の日本版ビッグバン以降の生保業界の再編をどう見ているのだろうか。我々には伺い知れない複雑な思いを抱いているに違いない。これまでシェア争いを続けてきた業界の再編があらゆる場面で噴出している。生保・損保は言うまでもなく、証券・銀行・車・大学など旧財閥・学閥間の中で争いを演じてきた業界がここ数年合併・併合・提携を繰り返している。外から見ている限りでは「グローバルスタンダード」「規制緩和」「セイフティネット」等々の言葉を使って問題を見ることが出来る。しかし内部にいる人間はこれまで激しい営業合戦を続けてきたライバル社と合併するという事態に際したときどのような思いを持つのだろうか。

受験産業も同じである。これまで東大だ、京大だ、やれ早稲田だ、慶応だ、明治だ、日大だと偏差値という物差しで学歴信仰の社会が作られてきた。これが来年から東大と早稲田と慶応と明治と法政と日大と専修と帝京が合併して○○大学となります、なんてなったらそれらの大学の学生、卒業生は大混乱だろう。しかしその波はいよいよ近付きつつある。女子大、短大では既に始まっている。国立大学の提携も始まった。私立同士の単位互換制度も定着し始めた。そうした真の大学業界の再編が始まった時を見据えて、我々は何を感じ、何に着目し、何が出来るのか。

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