森本哲郎『ことばへの旅:第3集』(ダイヤモンド社 1975)を読む。
ここしばらく公私共々バタバタしており、日常生活の中で、本を手に取る余裕すらない。あと半月ほどしたらちょっと余裕が出てくるので、読書の時間をきっちりと確保していきたい。
前作の第2集は美意識や精神論が多かったが、今作の第3集には忙しい生活や、それ故の理想に向けた営みなど現代をモチーフとした言葉が数多く収められている。前作よりも面白かった。
その中で、夏目漱石の『草枕』の中の一節である「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地と通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」を取り上げ、日本社会の世間の中で生きていく難しさを指摘している。学生時代にも目にした言葉であるが、然して気にも留めなかった。しかし、現在、職場や家庭などで、この言葉の意味がすごく実感できる場面がたくさんある。そうしたことを感じるほど私が老けたのか、いわゆる「大人」になってしまったのか。。。
また、フランツ・カフカの『審判』という小説の一節へのコメントが印象に残ったので、引用してみたい。
私は、カフカのあのことば、「要するに、おまえは逮捕された、それだけの話なのだ」というあの不気味なことばの意味を、こう解読します。
——要するに、私たちは生まれると同時に、運命に逮捕されたのだ。それだけの話なのだ。しかし、逮捕されたからといって、身柄を拘束されるわけではない。だから、知らん顔していようと思えばできないわけではない。が、その逮捕の理由を問うことが、じつは人生の意味なのだ。逮捕ということばを、尋問とおきかえてもよい。私たちは生まれると同時に、運命に尋問されているのだ。尋問に対して黙秘することは自由である。だが、全力をつくして答弁しつづけること、それが人間の生きる目的であり、内的な拠り所なのだ、と。
人生とは、〈答え続けること〉なのだ、と私は思うのです。