明日から遠藤周作の『カプリンスキー氏』というアウシュビッツ強制収容所をテーマにした短編集を授業で扱おうと、家で少し予習をした。どうしても活字だけだとあのアウシュビッツの惨状が説明できないので、映像を参考資料にしようとアラン・レネ監督『夜と霧』(1956 フランス)というDVDを借りてきた。V.E.フランクルの同タイトルの本が有名だが、こちらも当時の貴重な映像が残されており、観るもの全てに、戦争がこれほど恐ろしい冷酷な人間を創り上げるのかと惨憺たる思いにさせる。最後のナレーションが印象に残った。さて私たちは何をすればよいのか。
戦争は終わっていない
今、点呼場に集まるのは雑草だけ
“都市”は見捨てられた。
火葬場は廃虚に、ナチは過去となる
だが、九〇〇万の霊がさまよう
我々の中の誰が、戦争を警戒し、知らせるのか
次の戦争を防げるのか
今もカポが将校が、密告者が隣にいる
信じる人、あるいは信じない人
廃虚の下に死んだ怪物を見つめる我々は
遠ざかる映像の前で、希望が回復した振りをする
ある国の、ある時期における特別な話と言い聞かせ、
消えやらぬ悲鳴に耳を貸さぬ我々がいる