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『原発をとめた裁判長』


組合の総会で、小原浩靖監督・脚本『原発をとめた裁判長:そして原発をとめる農家たち』(2023 Kプロジェクト2022)を観た。
大変興味深い映画だった。前半は2011年の東日本大震災以降、原発再稼働で揺れた裁判において、2014年に関西電力大飯原発の運転停止命令を下した樋口英明・福井地裁元裁判長と、全国の原発差止訴訟の代表を務める河合弘之弁護士の両名がタッグを組んだ裁判闘争の模様が報じられる。また、後半に入ると福島・二本松で資金や許認可、地元の合意などと闘いながら、有機農業とソーラーシェアリングの取り組みを始めた近藤恵さんや大内督さんたちの農業に掛ける思いが綴られる。どちらも極めて笑顔でポジティブにしぶとい闘いに向かっている姿が印象的であった。

『ゴジラ-1.0』

山崎貴監督・脚本、神木隆之介主演『ゴジラ-1.0』(2023 東宝)を観に行った。
もちろん、物語の中心はゴジラが東京湾に出現するパニック映画であるが、太平洋戦争での特攻隊員の任務から逃げ出したトラウマに悩む青年の成長の物語ともなっている。不覚にも涙が少し零れた。過去にどれほどの失態を犯そうとも、まずは生き延びること、生きることこそが過去と正面切って向き合う唯一の方法だと教えてくれる。

『福田村事件』

春日部イオンで、森達也監督『福田村事件』(2023 太秦)を観た。
久しぶりにいい映画を観た感慨にふけった。
1923年9月に発生した関東大震災において、「朝鮮人が毒を巻いている」などの流言・飛語が飛び交い、朝鮮人や中国人、社会主義者ら6000人が殺害されている。千葉県福田村(現野田市)でも、香川県の行商人10人が朝鮮人と疑われ、自警団によって殺害されるという事件が発生した。この映画は、歴史の闇に埋もれていた福田村の殺害事件を真正面から取り上げている。

また、多数決主義に陥ってしまった大正デモクラシーの負の側面や、三一独立運動、1922年に発表された水平社宣言など、当時の日本の社会問題にもしっかりと触れられており、高校生に是非見せたい映画であった。

当初森達也監督が映画会社を回ったところ、どこも取り上げてくれなかったそうである。そこでクラウドファンディングで制作費を募ったところ、予想を超える額が集まった。また、出演してくれる俳優がいないのではという懸念があったが、どの俳優も即答で出演してくれたとのこと。

こうした日本の暗部に切り込んでいく映画が、観衆の力でヒットするというのは素晴らしいことである。

『君たちはどう生きるか』

本日、春日部のイオンで、宮崎駿原作・脚本・監督『君たちはどう生きるか』(2023 東宝)を観た。
本当は別の映画が観たかったのだが、時間が合わず、ふらっと前から気になっていた本作を観ることにした。同監督作品の『ハウルの動く城』のように、荒唐無稽な世界に一気に飛び込んで、どんどんと話が展開していくのだが、世界観の枠組みに関する話が少なく、置いてきぼり感を感じた。

宮崎監督のこれまでの作品のオマージュのような場面が数多く出てきた。「ジブリ飯」とも称される、腹一杯になりそうなパンやスープも登場するが、明らかに狙っている登場の仕方であった。ネット上でも賛否両論とあるが、なるほどと思う。

『パリタクシー』

埼玉新都心で、クリスチャン・カリオン脚本・監督『パリタクシー(原題:Une belle course)』(2022 仏)を観に行った。
中年タクシー運転手が高齢女性の客を自宅から老人ホームまで運ぶ1日を描く。パリの観光名所や女性の過去の思い出の場所を辿りながら、女性の口から波乱に満ちた人生が語られる。現在と過去のドラマを通じて、女性は過去の生き方に満足を感じ、運転手はこれからの生き方に自信を得るという極めて文学的な作品となっている。話は単純だが、印象に残る作品であった。
ダニー・ブーンがタクシー運転手シャルルを、フランスの国民的シャンソン歌手リーヌ・ルノーが客のマドレーヌを演じる。

2日前に公開されたハリウッド映画『ワイルドスピード』目当ての観客が多かった。先月から公開され、一日に1回のみの上映となった本作とは、同じ車の運転手の映画であったが、極めて対照的であった。『パリ〜』の方は観客も高齢で、ぱっと見、50代以上の人しかいなかった。