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『ブッダの幸福論』

アルポムッレ・スマナサーラ『ブッダの幸福論』(ちくまプリマー新書 2008)を読む。
1945年生まれの著者はスリランカ出身の僧侶で、1980年に国費で来日し、駒澤大学大学院仏教学専攻博士後期課程を卒業している。上座仏教普及の旗振り役で、数多くの本を執筆している。大乗仏教は仏を信仰するが、上座仏教は神も信仰もなく、他の宗教と異なると説く。そして、仏教は釈迦の「教え」であって「宗教」では無く、論理的で実践的な「心の科学」であるとし、今この場で役に立ち、自ら実践し理解する智慧の教えであると説明している。

本作でも、平易な語り口で、ゴータマ・ブッダの教えを日常生活に生かし、幸せになるコツが紹介されている。不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不飲酒の五戒だけはやってはいけない、布施、愛語、利他、平等の四摂事を実践すれば、あとは唇や鼻にピアスをつけようが自由であるという。

『20世紀理科年表』

山口幸夫『20世紀理科年表』(岩波ジュニア新書 1986)を読む。
タイトル通り、1901年の第1回ノーベル賞から元素、ライト兄弟、真空管など、科学の世紀を彩る発明や発見が紹介されている。著者は物理学を専門としているので、相対性理論や量子力学、原爆・原発に紙幅が割かれている。

アメリカのハッブルは、ボクシング選手として世界チャンピオン級だったが、学位までとって法律家になり、父のあとを継いだ。が、天文学の魅力にとりつかれて、とうとう天文学者になってしまった多才な人である。1929年に宇宙は膨張し続けていることを発見し、天文学では20世紀最大の発見といわれている。

第二次世界大戦後、マンハッタン計画に参加したアメリカの科学者たちは、「もう原爆はつくるな」というフェルミやオッペンハイマーたちと、「もっと強力な核爆弾をつくろう」と主張する人たちとに分かれた。そして、後者の意見が主流となった。ソ連もアメリカに負けまいと、水爆開発をすすめた。“水爆の父”と呼ばれるテラー(米)を中心とする人たちは、1952年から、住民をたちのかせたマーシャル諸島で水爆の実験をくりかえしていた。第五福竜丸はそのビキニ環礁での水爆実験の被害者となっている。

『ブッダ物語』

中村元・田辺和子『ブッダ物語』(岩波ジュニア新書 1990)をパラパラと読む。
「天上天下唯我独尊」や愛弟子のアーナンダへの言葉などの有名なシーンが混じえつつ、ブッダが生まれてからなくなるまでの物語である。タイトルにもあるブッダという言葉は、「真理を悟った人」という意味で、古くからインドで使われていた用語で、仏教の開祖個人だけを指す言葉ではない。同じように「釈迦」もゴータマ・シッダールタの出身の種族の名である。

『土と岩石』

地学団体研究会編『土と岩石』(東海大学出版会 1982)をパラパラと読む。
執筆当時、群馬県の後閑小学校に勤務されていた指出芳子さんの一文が印象に残った。
過放牧や過工作、灌漑、焼畑などによって砂漠化が進行しているが、一度砂漠になった地表をもう一度土に戻すのは大変な労力と時間が必要だと分かる。

私たちは、子どものころから土遊びをし、気軽に「土」ということばに親しんできている。生活の場も土の上だし、生きるための食糧となる稲や麦も土に根をはって育つ。それにもかかわらず、土がどのようにしてできたかは、意外に知られていないのが現状である。

「土」(土壌)とは、「地球の表面を薄く覆った部分で、植物・動物・気候などさまざまな作用を受けながら生成した自然の産物である」と難しい定義がなされているが、その源は岩石である。土はどのようにして岩石からつくられるのだろうか。

岩石は地表に露出すると、まず物理的風化作用(大気・熱などのはたらきで岩石が破砕される作用)を受け細かくくだかれる。さらに化学的風化作用(溶解・加水分解・酸化・還元などの作用)を受け、しだいに岩石が変質し、細かい砂や粘土の集まりとなる。これらの風化生成物はまだ土としての特徴をそなえていない。

地表や風化生成物には、最初に養分をほとんど必要としない地衣類や苔類などの植物が生活しはじめる。これらの植物は自ら分泌する酸によって、岩石や風化生成物を分解する。次に、これらの分泌物を栄養分として小さな植物や微生物が生活をはじめる。この小さな植物は光合成作用によって有機物を作り出し生育する。風化生成物中のこれらの遺体は微生物によって食べられ、植物の生育に必要な養分と複雑な化学組成をもった有機化合物(腐植)にかわり、腐植は風化生成物の中に残される。このようにしてできた風化生成物と腐植などの有機物とがまざったものを土(土壌)という。

また、ミミズは土の中にトンネルを掘って土を移動させたり、土を食べることにより土をたがやし、かくはんし、また有機物と土の混合をおこなったりする。土はその場所の気候の影響を強く受けながら生成する。

土は小さな土の粒子が集まって集合体となる。集合体と集合体の間にはすき間があり、その隙間に空気や水がはいりこんでいる。この空気や水があるために、植物や微生物が生活できる環境が作られる。岩石やかたい地層には、このようなすき間が少ないために、空気や水が入りこみにくく、生物の生育の場にはあまり適さない。土と岩石は同じものでありながら、ここでそれぞれのちがいが出てくる。