地理」カテゴリーアーカイブ

「フィンランド 中立転換」

本日の授業で紹介した、フィンランドとスェーデンの2カ国が米国・英国が中心の「北大西洋条約機構(NATO)」への加盟を意思表示した、との記事が東京新聞朝刊に掲載されていた。

改めて外務省のホームページでフィンランドについて調べてみた。国土面積は、33.8万平方キロメートル(日本よりやや小さい)で、人口は約551万人(2018年12月末時点)となっており、小国ながら日本よりもゆったりとした環境である。

EUに加盟しており、一人当たりGDPは49,845ドル(2018年,IMF)となっており、日本よりも高額だが、GDPに対して社会保障費が30.9%を占める高負担福祉国家のため、日本よりも生活実感は低いかもしれない。

第二次大戦中の2回にわたるソ連との戦争経験を踏まえ、冷戦時代以降も、西側にも東側にも与しない中立政策をとっていたが、今回のNATO加盟は、フィンランド外交の大元から変わるものである。ムーミンやサンタクロースの平和的なイメージが揺らいでしまう。

「原材料高騰 暮らしに直撃」

本日の東京新聞朝刊記事より。
値上げが止まらない。オリーブオイルは、夏に乾燥する地中海性気候に属するスペインやギリシア、イタリアで生産されている。またサラダ油の原料は大豆であり、アメリカやブラジルが生産量のトップを占める。また、日清キャノーラ&アマニ油に含まれるアマニ油はカザフスタンとロシアで生産されている。

また、円安や水産資源の減少、物流コストの上昇を背景に、「回転寿司=100円」という値段の常識が崩れようとしている。このうち水産資源の減少については、温暖化による漁場の変化などもあるが、日本のEEZ内外の水産資源が周辺諸国に脅かされているという現実が突きつけられている。授業の中で北方四島、竹島、尖閣諸島について、日本の領土意識や水産資源という観点から説明した。

ホッケや、サケ、タラ、カレイなどの寒海性魚類は寒流の影響を受けるので、北方四島の影響は免れない。また、

回転寿司が好きな生徒の皆さんは、

「英領北アイルランド議会選 シン・フェイン第1党へ」

本日の東京新聞朝刊記事より。
北アイルランド議会選挙で、アイルランドとの統一を目指すシン・フェイン党が第1党になったという記事が掲載されていた。私は高校・浪人時代は世界史選択であった。「怒った(1905年)我らのシン・フェイン党」という語呂合わせで、イングランドに抵抗するアイルランド政党の成立年号を口ずさんでいたことを今でも覚えている。

そのシン・フェイン党が北アイルランドで第1党になったということは、United Kingdomの解体が始まったということだ。EU離脱後の経済の混乱に加え、ジョンソン首相に対する批判が重なったようだ。

確認しておくと、私たち日本人がイギリスと呼んでいる国は、United Kingdom of Great Britain and Northern Irelandといい、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国と訳される。グレート・ブリテン島(東側の島)にあり、ロンドンを含むイングランドと西側のウェールズ、北側のスコットランドの3つの国と、アイルランド島の北側の北アイルランドを合わせた4つの連合王国がいわゆるイギリスである。サッカーが好きな生徒は、ワールドカップにイギリスという国は存在せず、それぞれバラバラにトーナメントに出場するのは知っているであろうか。

1922年に北アイルランドを併合して以来、ちょうど100年目の今年、北アイルランドが独立、アイルランドとの統一を目指すという流れ興味深い。ブレグジット(EU離脱)に伴い、スコットランドも独立へと動いており、UK(連合王国)の動向について、授業の中でも触れておきたい。

『EU ロシア産石油禁輸へ』

本日の東京新聞朝刊に、欧州連合が軍事侵攻を続けるロシアへの経済措置として、ロシア産石油を年末までに段階的に原則輸入禁止とする制裁案を発表した。

このEUの石油禁輸措置を受けて、WTI原油先物市場の価格が急上昇している。(下段チャート)
原油を100%輸入に頼る日本にとって、原油価格の高騰は生活費に直結することである。ここ2ヶ月ほど、太平洋戦争中の「鬼畜米英」ならぬプーチン政権憎しのムードが高揚し、軍事予算が倍増し、物価が高騰しているにもかかわらず、日本はプーチン包囲網の反露協調路線を突き進むだけである。

また、ハンガリーとスロヴァキアの両国は、来年以降もロシア産石油の輸入を続けると報じられている。両国ともかつては社会主義国であり、旧ソ連と緊密な関係にあった。現在でもロシアからウクライナを経由して、原油を輸送するドルジバパイプラインが通っている。(下段地図)
両国とも内陸国であり、一人当たりのGNIは1万6,000ドル程度で、ロシア産以外の原油の供給は、技術的にも経済的にも対応は難しい。

授業でも触れたが、原油も天然ガスもトラックや列車で運ぶことができない。そのため、海に面した国は海沿いに石油精製工場を建設せざるを得ない。ちなみに、日本も同じで1960年代(昭和30年代前半)までは石炭で稼働する内陸の工場があったが、1970年代から海に面した太平洋ベルト地帯に工場が重化学工業の工場が集中することとなった。

EUがいくらロシア産石油の輸入禁止というポーズを見せたところで、プーチン政権を追い込むところまではいかないであろう。岸田政権もいたずらに反ロシアのムードに流されることなく、国民生活に直結する安定した資源の確保に努めるべきである。

「ロシア モルドバ侵攻示唆」

本日の東京新聞朝刊に、ロシアがウクライナの西側に位置するモルドバ侵攻の計画を持っているとの報道があった。モルドバといってもピンとこない生徒が大半であろう。ルーマニアの東側にある貧しい国である。一人あたりのGDPは4,523ドル(2020年:IMF)である。

ちなみに、ざっくり一人当たりのGDP(地理ではGNIも同じ)が10,000ドル以上の上流国が70カ国ほど、3,000ドル以上10,000ドル以下の中流国が70カ国ほど、3,000ドル以下が下国が60カ国ほどとなっている。下流国のうち10カ国ほどが1日2ドル以下の飢餓状態の最貧国となっている。モルドバ国の経済は中の下といったところか。

閑話休題。人口は246万人のうち大半がルーマニア系であるが、東部のドニエストル川流域はロシア系が多い。帝国書院の地図を確認してもらえれば一目瞭然だが、モルドバの東側にはロシア産の原油を輸送するパイプラインが設置されている。ロシア産の原油や天然ガスのパイプラインがあるところに、ロシアのスパイとロシア軍の活動ありとの法則に照らすと、モルドバ東部にロシア軍が展開することは明らかである。