本日の東京新聞夕刊の訃報欄で、古筆学者小松成美氏の逝去が伝えられていた。
私の十数年前の大学の学部入学式というお祝いの席で、1時間近くに渡って専門の講義を続けた強者で、大変印象に残っている。
氏は古筆学という新しい学問を唱え大成させた人物として知られる。古筆学は中世や中古の文学作品の写本について筆跡の研究から筆者や年代を特定する学問である。せっかくのありがたいお話であったが、話の後半に入ると、私の周囲の学生だけでなく、壇上の教員も船を漕いでいた。その光景が記憶の片隅に今でも残っている。
どんな場であっても、顰蹙を買おうが、自分の学問については自身を持って語る、大学教授の矜持を感じた一時であった。
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「迷走『普天間』の教え」
本日の東京新聞社説に、「迷走『普天間』の教え」と題された社説が掲載されていた。
普天間問題における鳩山首相の迷走ぶりを批判した上で、次のように述べられている。
普天間問題で鳩山政治に最も欠けている点は、日米安保条約改定から半世紀を迎えて「日米同盟は日本の安全確保と同時に、世界平和にどう貢献できるのか」と いう大局論と、それを踏まえての「在日米軍基地のあり方」「自衛隊などの対米協力のあり方」という各論の詰めではないでしょうか。
本来なら昨年11月、オバマ米大統領が来日した際、「トラスト・ミー(私を信頼して)」といった情緒的な会話でなく、日米双方の政権交代を受けて「まず は大局論での意思疎通を深め、その上で沖縄の負担軽減を含めて各論の安全保障見直し論議に入りたい」と提案し、大統領の同意を取り付けるべきだったのでは ありませんか。
(中略)鳩山首相は「学べば学ぶにつれて米海兵隊の役割、抑止力維持(の大切さ)が分かった」と言いますが、とことん悩むことも指導者の姿勢として大事でしょう。
今からでも遅くはありません。鳩山総理、掛け違えたボタンをもう一度整え直してください。「五月末決着」が延びても日米同盟が崩れるほど今日の両国関係は、柔くはないと思いますよ。
まさに、その通りであると思う。ここ数年の大手マスコミによる「北朝鮮は危険な国」報道によって、鳩山総理の口にする「抑止力」なる言葉がすっかりと市民権を得てしまった。沖縄に駐留する海兵隊の存在そのものが地域紛争を「喚起」している現実をねじ曲げて。
この普天間問題を鳩山総理の資質そのものに求めていくマスコミの報道もどうかと思う。そもそも沖縄に基地が固定化されているというのは、1960年、 1970年の日米安保、1990年代後半の日米ガイドラインに端を発する問題である。しかし、それを鳩山総理の「言葉」にだけ問題を焦点化するのは、本質 的な問題から目を背け、恣意的に米国の一人勝手な世界戦略に与するのと同じである。
米軍基地は速やかにグアムでもどこでも帰ってもらうべきである。最悪は、県外である硫黄島でも良いではないか。そしてその代償として、日本には米軍基地へ の思いやり予算以上の平和外交をする覚悟が求められるのである。日本国憲法に規定された平和の象徴である天皇などは、今こそ右翼の力をバックに、米軍に 「ノー」を突きつけてほしいものである。
本日の東京新聞朝刊
本日の東京新聞朝刊に、水俣病について
「北朝鮮の有事の危険度」
本日の東京新聞朝刊に「北朝鮮の有事の危険度」と題したコラムが掲載されていた。
日本のマスコミでは、脱北家族の報道などで事あるごとに、北朝鮮の兵力や政治体制の脅威が強調される。しかし、現状は、戦闘機のほとんどが旧世代の代物、実際の戦闘では使い物にならず、兵士も栄養失調や士気の低下が著しいとされている。そして、現在取りざたされている沖縄米軍基地の一番の存在理由として挙げられる北朝鮮有事について次のように述べられている。
(北朝鮮の)核兵器に対しては海兵隊は無力であり、通常兵器での有事の際には 「韓国軍と駐留米軍で防御可能」という。即戦力として投入できる沖縄駐留海兵隊員は約二千人とされ、現実的には「本格的な戦闘は困難。もっぱら韓国や日本、中国などに住む米国人救出部隊となる」といわれる。
北朝鮮に対する「牽制効果」としての海兵隊についても、「牽制効果なら、海兵隊がいなくても日本にいる米陸海空軍の兵力だけで十分」という意見は米国防総省内にもある。
コラムのあとがき、東京新聞記者によるデスクメモが印象に残った。
北朝鮮はミサイルや核を開発し、危機感をあおって食料などの見返りを得てきた。旧態依然とした瀬戸際戦術だが、米国は北東アジア安定のためと称して日韓に長期駐留し、中国は不透明な軍事力増強を続けている。ニワトリと卵の関係ではないが、本当は誰がこの地域を不安定にしているのだろうか。
本日の東京新聞夕刊に、朝刊の疑問に答えるようなコラムが掲載されていた。
名古屋大学特任教授で、外務省の「朝鮮議事録」に関する文書公開に携わった春名幹男氏は次のように述べる。
この(昨秋来の)日米協議で、米側は朝鮮半島有事の際の対応に関して、あらためて佐藤首相の「公約」(朝鮮半島有事の際、在日米軍は事前協議無しに軍事行動 を起こすことを日本政府が当時同意していたという事実)の再確認を求めたようだ。これについて、日本側(鳩山民主党政権)は事前協議に対して「迅速かつ適切に」対応するとの新しい方針示したというのだ。
(中略)また、岡田克也外相自身も米国の「核抑止力」を肯定し、核兵器の存否を「肯定も否定もしない」米政府への支持を表明、米側を安心させた。
密約の相対的重要性は時代とともに変化する。今後は朝鮮有事への対応に関する政策調整が日米の課題となる。
「沖縄から見た密約」
本日の東京新聞夕刊に、沖縄在住の芥川賞作家目取真俊氏の「沖縄から見た密約」と題したコラムが掲載されていた。
目取真氏は、在沖在日米軍の施設や住環境を支え続けている「思いやり予算」の源流が、施政権返還時の財政・経済面での日米間の取り決めにあることを明らかにした上で次のように述べる。
そして、現在の普天間基地の移設について新たな密約を交わすことのないよう警告を発している。
沖縄にとって今回明らかにされた密約問題は、過去の歴史問題として片付けることはできない。米軍基地の沖縄への集中化、固定化を生み出し続ける構造が、施政権返還時の密約から今日まで継続しており、まさに現在的な問題である。