東京新聞で今年1月3日から7回に渡って連載された、日本学生支援機構が「販売」する奨学金に関する特集記事は良かった。
少々早いが今年1番の内容であると思う。
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「えたい知れぬ『空気』立証」
本日の東京新聞夕刊の連載コラム「ネットと言葉」で、ネットと偏見の相関関係を研究している社会心理学者高史明さんの話が興味深かった。高さんは、昨秋出版した著書『レイシズムを解剖する 在日コリアンへの偏見とインターネット』(勁草書房)で、膨大なツイッターを分析し、在日コリアンへの偏見がネット上でどう現れているのか明らかにしている。
ちょうど先日の「文化系トークラジオ」の中で、8.5秒バズーカやSEALDs(シールズ)に対する誹謗中傷をネットで盛んに行なっているのは40代男性だという話を聞いたばかりである。少々長いが一部を引用してみたい。
大学院生だった2002年ゴロから、不穏な空気が漂い始めるのを感じた。サッカーワールドカップが日韓共催で開かれ、北朝鮮の日本人拉致関与が明らかになった年。ネットでは差別的な表現が急増した。子ども時代のいじめを思い出した。「教授や院生にも、在日特権のデマを信じる人がいた。これはまずいと思ったんです」
08年から研究を始めた。統計を取ると、数々の事実が明らかになった。たとえば「社会支配指向」が強い人は、ネットの使用時間が長かった。この指向は、簡単にいえば弱肉強食主義。「下層の人間は搾取されても仕方ない」という考え方だ。
さらに匿名掲示板である「2ちゃんねる」の、個別の書き込みをテーマごとにまとめて投稿した「まとめブログ」をよく見る人は、「現代的レイシズム」と呼ばれる差別主義的な特徴が強いという傾向も分かった。
「まとめブログ」は単なるニュースの羅列ではなく、個人のコメントが付いている。「その感情的な感想が、読者に面白いと思わせる。新聞などと違い、ネット情報に期待されるのは正確さより面白さ。言論のマーケットでは、正しい情報が生き残るとは限らない。不快感や怒りを始め、感情を呼び起こすものの方が広まっていく」という。
「面白い」と思われた情報はどんどん拡散し、マスメディアの情報よりもネットでは大量に出回るようになる。すると「事実と違っても、真実だと信じられていく。一人の論理的な意見より、大勢の不確かな情報が信用される」
そして「みんなが言っている」という感覚が、これまで「表だって言えなかったこと」を現実社会でも言える雰囲気をつくった。たとえば「沖縄の地元紙をつぶせ」というネット上の匿名の書き込みと同じことを、公的な場で発言する作家が現れた。
用語解説より
【レイシズム】
人種・民族の間に優劣の差があるという思想。米国の黒人差別研究で使われた分類では「この人種は能力や性質が劣っている」というような「古典的レイシズム」と、「差別は解消され、努力不足による『区別』があるだけなのに、被害を主張して不当に特権を得ている」と考える「現代的レイシズム」に分かれる。高さんはこれを日本にあてはめて考察した。「在日は生活保護を優先的に受けられる」「税金は免除」といった「在日特権」のデマは「現代的レイシズム」の一例。
「戦わないために闘う」
本日の東京新聞朝刊に、名護市辺野古のキャンプ・シュワブのゲート前で座り込みを続ける横田チヨ子さんの話が載っていた。サイパン島で機銃掃射の中で駆けずり回った経験のある横田さんは次のように述べる。
ウチナンチューはサイパン島でだまされてのたれ死んだ。また沖縄は騙されるのか—。戦火をくぐり抜け、生かされている私の使命は、サイパン島の悲劇を繰り返させないこと。基地がなければ、沖縄は攻撃されない。それが私の最後の仕事。
どんな時間がかかっても、話し合いを続けなければいけない。それが民主主義。私たちの闘いは戦争を起こさない、戦わないための闘いです。
戦わないための闘い、つまり話し合いを続けることが民主主義だと横田さんは強調する。数の力で話し合いを拒否するどこかの首相に聞かせたい話である。
「子は宝。産むことは罪なのか」
本日の東京新聞朝刊に、中国の「一人っ子政策」全廃に関する特集記事が掲載されていた。身につまされるような話だったので、全文引用してみたい。この話は決して他所の国の過去の政策として済まされる話ではないと思う。他山の石としたい。
中国当局は、長年続けた「一人っ子政策」の全面廃止を決めたが、既に二人目以降を出産した親が罰金が払えないために「黒孩子」(闇の子)と呼ばれる無戸籍層に恩恵はない。二人の娘を持つ北京市の母親(41)が苦悩を吐露した。
九歳の長女と六歳の次女がいます。次女は戸籍がありません。中国では何をするにも「市民身分証」のカードが必要です。身分証のない次女は飛行機にも乗れず、医療保険もない。このままでは将来、普通の就職もできません。
二人目の妊娠がわかった時、中絶するか悩んだ末に産みました。北京市に届け出ると、平均年収の六年分の二十四万元(約四百五十万円)を社会扶養費(罰金)として請求されました。家財道具を売って払おうと考えましたが、ネットで調べたら、一人っ子政策に抗議して異議申し立てをする親がいると知りました。
彼らと交流するうちに、「自分は国策に逆らった」と洗脳されていたことに気づきました。子どもを産むことは天から授けられた権利。それがなぜ罪なのか。国が権利を奪うことはできない。私たちも異議申し立てをしました。
次女は三歳のころ、自分に戸籍がないことに気づきました。でも身分証は買えると思っているようで、缶に小銭を入れて貯金もしています。私がつい「もうじき身分証がもらえるよ」と言ってしまったことがあります。娘は興奮して喜び、「(身分証の)写真を撮る時、これを着るの」と洋服も用意しています。いたたまれない気持ちになります。
政府は以前、「無戸籍の子どもは千三百万人」と発表しました。実際はその何倍もいるでしょう。中国では、役人は一人っ子政策を徹底しないと出世できません。地方では罰金を払わない家庭の家財道具を押収したり、暴力を加えていると聞きます。北京に住む私たちは恵まれている方です。
「黒孩子」という言葉には抵抗がありますが、まだ我慢できます。でも「超生的」(余分の子)という言葉もあり、それは許せない。子どもはみんな宝物。余分な子なんていません!
一人っ子政策の廃止は遅すぎました。既に多くの家庭が罰金を払っている以上、私たちの罰金もなくならない。戸籍がなくとも義務教育は受けられるので、次女も小学校に通っています。でも高校、大学は無理。いずれ罰金を払うことも考えています。
姉妹が仲良く遊ぶ姿を見ると、本当に幸せを感じます。周りの人に「二人目を産んで後悔していない?」と尋ねられます。でも夫といつも話すんです。「あの時、中絶していたら、こんなかわいい子と出会えなかった。その方がずっと後悔していただろうね」って。
中国では一人っ子政策を突き進めた結果、親が一人の子どもに財力をつぎ込む生活様式に変わり、条件のよい進学、就職のために幼稚園選びから競争が始まるというギスギスした雰囲気が蔓延するようになった。無戸籍層は公式統計では国内で1300万人に達すると言われるが、二人目を産んで罰金が払えずに国外へ移住せざるを得ない例もかつてあったように思う。中国の内政問題ではなく、外交問題だと言ってもよい側面がある。
人口が多いからと抑制し、今度は一転人口が増えないからと緩和策に踏み切ったわけだが、日本の猫の目政策とも重なるところが多い。
今後とも影響を及ぼす問題であり、注目していきたい。
一人っ子性格
中国が人口抑制策として1979年に導入。違反者から高額の罰金徴収や拘束、強制中絶などの措置を取ってきた。この結果、昨年の0歳~14歳人口は全体の16.5%(世界平均27%)に。2013年には夫婦の一方が一人っ子の場合、2人目を認める緩和策を始めたが、出生数は大きく伸びなかった。政策緩和は来年から。
「核燃料サイクルに12兆円」
本日の東京新聞朝刊一面は、廃炉が取りざたされている高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を中核に進められてきた核燃料サイクル事業にかかったコストが、少なくとも12兆円にのぼり、今後も毎年1600億円ずつ増えていくことが判明したとの記事であった。
先日大騒ぎした国立競技場の建設費が千数百億円から三千数百億円と言われている中で、この12兆円の馬鹿らしさは一体なんなんだ。しかも青森県六ケ所村の再処理工場すら完成の見込みも立っておらず、全く実績ゼロなのに、今後も毎年国立競技場なみの建設費が消えていくという。国立競技場のデザイン決定に至る瑕疵は報道の中でかなり明らかになったが、この「もんじゅ」も見通しの甘さと、惰性に任せ見直しを避けてきた体制に是非ともメスを入れてもらいたいものだ。東京新聞の良心に期待したい。