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「再生エネで地域復興を」

本日の東京新聞朝刊に、太陽光を中心に小水力や風力発電にも取り組む会津電力の佐藤弥右衛門社長のインタビュー記事が掲載されていた。佐藤氏は次のように語る。

 日本人は事故の影響の大きさを身をもって知ったのだから「原発ゼロ」が政策の出発点のはずです。実際、原発が全て止まっても深刻な停電は起きていません。大手電力が苦しくなるから原発を稼働するというのは本末転倒です。

さらに、再生エネルギーのありかたについて次のように語る。

 再生エネを盛り上げることで地方を自立させるという視点が忘れられています。これまで地方の原発や巨大なダムを使い、大規模集中型で発電した電気が都会に送られてきました。福島県はその典型です。豊かな自然が搾取される代わりに補助金が配られる植民地型構造で、地方の中央頼み体質も助長しています。

太陽光などの再生エネルギーは地元の発電会社や家庭でも発電でき、地域ごとに電気を自給自足する小規模分散型。自然の恵みは地域に還元され、雇用も生んで復興や自立を促します。会津電力も5年で発電所が77カ所の増え、従業員も若い人を中心に約20人に増えました。

「大規模集中型」は1カ所の発電所が事故を起こすと停電の影響が広域に及美ます。「小規模分散型」は地域内の無数の小さな発電基地が送電線で結ばれ、電気を融通し合う仕組みなので、1カ所が事故を起こしても全域での停電はありません。ドイツなどでは送電ネットワーク技術の進展でこれが実現しています。日本では大手電力保護が優先され、世界で当たり前のことをやろうとしません。

佐藤氏の「本末転倒」という言葉が印象に残る。ここ数年のエネルギー政策はまさに「本末転倒」である。コストのかかるリスクの大きい原発を優先し、コストもリスクも小さい再生エネルギーは普及させまいとあの手この手で妨害にかかる日本政府のあり方そのものを表している。

急増「コンビニ外国人」

本日の東京新聞朝刊の記事より
コンビニで働く外国人はここ数年急増し、大手三社で4万人以上となった。既に身近な存在だが、本年はなかなか紹介されない。どんな生活をし、なぜこんなに多いのか。

・以前は中国系が多かったが、東日本大震災後、日本語ブームのベトナムやネパールの出身者が増えている。
・最近はスリランカ、ウズベキスタン、ミャンマーの人も多い。
・彼らの大半は留学生で、週28時間までアルバイトが認められている。
・日本は「勉強しながら働ける珍しい国」である。
・人手不足のコンビニ業界のニーズと日本語を実践で学ぶことができる留学生の思惑が一致した。
・日本政府も「留学生30万人計画」を掲げ、受け入れに積極的だ。ファーストフードや居酒屋を含む留学生バイトは昨年は約26万人となり、13年の2.5倍に増えた。日本語学校は過去5年で200校も増え、680校もある。

・日本語学校の授業料や渡航費は現地の平均年収の数十倍になることもあり、多くの留学生が借金を背負っている。
・中には強制送還覚悟で週28時間を超えて働く人や、バイト先のあっせんで摘発される日本語学校もある。
・日本は「移民」を認めていないが、外国人労働者は5年連続で過去最多を更新し、昨年は約128万人になった。
・最近は「外国人技能実習制度」の対象に「コンビニの運営業務」を加えようとする動きもある。

フリーライターの芹澤健介氏は「移民に賛成か反対かという議論を超えて、私たちの生活は外国人の労働力に依存している。実際に隣で働き、生活している人たちと、いかに共生していくかを考えるステージに入っている」と話す。

「末端に責任転嫁 『下剋上』に通じる抵抗」

本日の東京新聞夕刊にノンフィクション作家保坂正康氏のコラムが掲載されていた。このところ加計学園の獣医学部新設や自衛隊中堅幹部の暴言、財務省の森友学園との交渉記録の意図的廃棄、防衛省のイラク日報隠ぺいなど、虚言、ごまかし、言い逃れ、責任転嫁の事件がメディアを賑わせている。これらの事件に共通する構図として、保坂氏は次のように述べる。

 この構図は二つの特徴を持っていることが容易に分かるだろう。
一つは、責任は「より下位の者に押しつけられる」である。もう一つは自衛隊中堅幹部の件のように「言った」「言わない」に持ち込み、うやむやにしてしまおうとの計算である。私たちは、誰の言を信用するのか、という基本的な次元に追い込まれているということである。
保坂氏の「基本的な次元」という言葉が印象に残った。ここ数年の国会中継を見ても、論点をすり替え、誤魔化し、信用の有無という低次元のレベルでしか政治を見ることができなくなってしまっている。

保坂氏はさらに次のように続ける。

 この二つの特徴を最もよく重ね合わせることができるのは、太平洋戦争後に、連合国によって裁かれた日本人将校、下士官、兵士のBC級戦犯裁判である。
日本軍将兵の非人道的行為は、米国、英国、オランダ、フランス、ソ連、中国など各国の法廷で裁かれた。実際に手を染めた兵士は、上官の命令によって捕虜を処刑している。しかし、裁判で上官は「殺害しろ」とは言っていない、「始末しろ」とは言ったけれど、と強弁し、兵士たちが死刑を受けたケースも少なくない。(中略)
BC級戦犯裁判の残された記録は、末端の兵士に責任が押しつけられていくケースが多いと語っている。この構図は、「言った」「言わない」や「会った」「会っていない」の社会事象と全く同じなのである。

最後に保坂氏は次のようにまとめる。

 いま、私たちは歴史が繰り返されているとの緊張感を持たなければならないだろう。いや「歴史の教訓」が生かされていないことへの怒りと、私たち一人一人の運命が、こんな構図の中で操られていくことを透視する力を持たなければならないはずだ。時代はまさに正念場なのである。

「北 ミサイル実験中止表明したのに…」

本日の東京新聞朝刊コラムで、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が核・ミサイル実験の中止を表明したにも関わらず、全国瞬時警報システム(Jアラート)の全国一斉試験を行う日本政府に対する疑問が呈示されていた。

纐纈厚・明治大特任教授は「Jアラートや避難訓練に実効性はない。ミサイルへの備えというのは口実だからだ」と切り捨て、さらに、その狙いについて「意識統制だ。国家の命令でどれだけ国民が動くのかの確認で、監視社会への一里塚。ただ、もはや脅威の前提は崩れた。Jアラートや防衛のあり方を見直すべきだ」と訴える。

Jアラートは災害や日本への武力攻撃の動きなどを国が把握した際、自治体の防災行政無線を通じて国民に警告するシステムで、2007年から運用され、地震や津波情報に用いられてきたが、近年は北朝鮮のミサイル発射のタイミングで発動されている。消防庁国民保護室は「Jアラートはミサイル着弾警報専用ではない」と力説し、地震や津波など大規模災害も対象で、「試験放送は機械の不具合がないかを確認するための動作チェック。機械なので定期的な訓練が必要」と継続する姿勢を堅持する。

こうした動きにジャーナリストの高野孟氏は「国際社会が北朝鮮を巡って大勝負をかけている時に、そんな訓練をすれば『この期に及んで日本は戦争の準備か』と批判される」と危ぶむ。さらに、「安倍政権は北朝鮮の脅威をあおって、新たな安全保障法制を成立させた。森友・加計問題を巡り、内閣支持率が低迷する中、政権維持には『脅威』が必要。訓練を止めれば脅威が薄れたのかと突っ込まれる」と指摘する。

消防庁は本年度予算で、国民保護訓練の実施に前年度比44.4%増の1.3億円を計上したが、明治大の西川伸一教授は、頑なに訓練を続ける姿勢を霞が関に染み付いた「予算全額消費の原則だ」と指摘する。「予算は使い切る。政策の合理性が消えたら口実を作る。それが官僚だ。使い切らないと翌年度以降、予算が減らされる。省庁にとっては権限が縮小されるという恐怖だ」と述べ、さらに「安倍政権が持ちこたえているのは、北朝鮮脅威論のおかげ。訓練をやめられないのは、政権への忖度もある」と警告を発している。

スマホや町の防災無線が一斉に唸りを上げるという手法は、大変アナログである分だけ、聴覚に直接脅威を印象付けるシステムである。学校の修学旅行での戦争追体験や起震車などの災害体験とよく似ている。実際に起こった戦争や災害の疑似体験なら話は分かるが、起こってもいない核・ミサイルの恐怖体験というのは国民に正常な判断を与えない危険な手法である。
地震や津波などの災害と北朝鮮の脅威はきっちり分けて考えるべきである。

「マハティール氏 捜査」

本日の東京新聞朝刊国際面に、マレーシア警察が、偽のニュースを流布した疑いがあるとして、9日投開票の総選挙に立候補しているマハティール元首相を捜査しているとの記事が掲載されていた。
立候補を届け出るためにチャーターした飛行機の前輪に不具合が見つかり乗り換えざるを得なかった事故について「意図的な妨害行為があった」と主張したマハティール氏に対し、虚偽の情報の発信を取り締まるフェイクニュース対策法に抵触するおそれがあるというのだ。

何とも背筋が凍るような記事である。インタネット全盛の時代に、このような前時代的な法律が存在しているのだ。日本もいつ真似するやもしれないので注意が必要だ。

4月4日付の朝日新聞の記事によると、次のように説明されている。

マレーシアで3日、「フェイクニュース」の発信者に最高50万リンギ(約1370万円)の罰金や6年以下の禁錮刑を科す対策法が成立した。言論統制の強化につながるとの指摘が国内外から出ている。

 上院が3日、賛成多数で可決した。新法は「悪意を持って全部、または一部が事実に反するニュース、情報、データと報告書を出版、流布した人」を罰するなどと規定。対象には外国人や外国メディアも含まれ、「フェイクニュース」の流布を財政的に支援した人も対象となる。何が「フェイクニュース」や「悪意」にあたるかという定義があいまいで、恣意(しい)的運用が可能と懸念されている。