創価大」カテゴリーアーカイブ

人文地理学 第2課題

1 八王子における「学園都市」化の過程
 東京の郊外に位置する八王子は,関東山地と武蔵野台地の境に位置し,水はけがよいために水稲よりもむしろ桑の栽培に適していた。そのため八王子では桑栽培と養蚕、機織りが古くから発達した。また,長野や山梨,群馬で生産された生糸が,八王子に集められ絹製品として出荷されてきた。1906年発行の地図を見ると,甲州街道の宿場町として発展してきた八王子駅の周囲は桑畑で埋め尽くされている。
 しかし,戦後になり繊維産業自体の不振の影響を受け,1960年代末を最盛期に八王子の繊維産業は衰退の一途を辿っている。桑畑の跡地には,東京都心から40kmという場所柄,湾岸地帯から機械や金属工業の工場が多く移転し,大規模な工業団地が建設された。また,地方から東京への人口移動の増加によって,国道16号線を中心とした郊外に住み,都心に通勤通学するというライフスタイルが普及した時期とも重なる。東京都心周辺に位置することから,かつての桑畑が住宅地へ転用され、農村社会から一足飛びに都市化が進んだ地域である。
 また,1963年の工学院大学を皮切りに多くの大学が移転してきて,学園都市としての性格も強まってきた。2013年現在,八王子は21の大学と10.3万人の学生を抱えている。農村,中小工場団地,郊外ニュータウン,大学と大変異なった側面を合わせ持つ都市である。しかし,大学と企業の人材交流や,絹織物産業と先端科学を結びつけるような産業振興,地域活性化も官民協同で地道に取り組まれている。都市と農村といった不釣り合いな関係であるが,時間的推移や空間的考察から,お互いが理解しあい,ともに繁栄する道を模索することは地理学の重要な研究課題でもある。

2 百貨店,スーパーマーケット,コンビニエンスストアの「商圏」と「立地」の特徴
 小売業は住民の消費生活と密接に関係している。店舗の立地は,小売店が扱う商品の種類に左右される。単価の安い食料品や日用品は最寄り品,高級衣料品や家具,電気製品は買い回り品と呼ばれる。安価で購入頻度の高い最寄り品の場合,客は移動の際に支出できる費用や時間を低く抑えようとするため,商圏は必然的に狭くなる。一方,高価で購入頻度の低い買回り品の場合,買い物客がある程度の交通費と時間を負担する覚悟があるために,広い商圏を対象とすることができる。
〈百貨店〉
 買い回り品を中心とした品揃えと接客対面方式を特徴とする大型小売店であり,大都市や地方の主要都市などの限られた中心地に立地する。1980年代は人口増加により急成長した郊外への進出も目立っている。総じて百貨店の立地する中心地は,一定の距離を保ってまばらに分布する。それぞれの中心地が広く,排他的な商圏を補完している。
〈スーパーマーケット〉
 取扱商品の大部分が最寄り品であり,販売手法にセルフサービスの導入が特徴である。特に食品スーパーは,周辺住民が毎日のように利用するために,補完する商圏も狭く高密度に分布する。チェーン方式の経営形態の店舗も多く,特定地域に密集する傾向が強い。
 また,1990年代以降の出店規制緩和や車社会化の進行などを背景に,大都市郊外の幹線道路沿いに大型複合施設としての出店するケースも多い。ロードサイド型と称され,スーパーだけでなく,ホームセンターやドラッグストア,ファミリーレストランなどが併設され,広大な駐車スペースが完備している。郊外地域の住民の自家用車依存と,消費者の低価格傾向に適した小売形態で,広い商圏を補完するために収益性も高い。
〈コンビニエンスストア〉
 1970年代以降,24時間営業のコンビニが,都市や郊外の主要道路沿いに多く立地するようになった。コンビニは,チェーン方式で店舗を増やし,商品の販売だけでなく,公共料金支払いの代行や,旅行などのチケット販売サービスも提供する。そのため,都市圏だけではなく,地方にも広がっている。
 都市部のコンビニの商圏は,客が5~10分で到着できる範囲が望ましいとされ,百貨店やスーパーマーケットよりも密集して立地する。セブンイレブンは,意図的に近隣の同系列店と商圏が重複するように出店している。ドミナント方式と呼ばれるこの経営戦略は,狭い範囲で密集することにより,地域内でのチェーン店の認知度の向上や,ルート配送のコスト削減を狙ったものである。
 地方のコンビニは大都市圏のコンビニよりも商圏が広く,幹線道路沿線での立地や広い駐車場など,自動車での利用を前提としている。その一方,地方都市の中心部からスーパーマーケットが撤退する例もあり,中には生鮮食料品の入手困難な地域も出始めている。

参考文献
八王子市公式サイト(2014年6月10日検索)
『新編詳解地理B』(二宮書店 2013)

人文地理学 第1課題

1 身のまわりの景観
 地理学とは,人々が居住する土地の自然環境や人文環境に対していかに適応しているのかを究明する学問である。すなわち,人間と場所との関わりを考えることである。人間は長い歴史の中で,生きていくために周囲の様々な地域資源を活用し,自分たちの生活環境を築いてきた。身の回り景観は,そのような人間の営為により生み出されてきたものである。したがって景観には,その地域で生活する人びとの価値観が投影されており,これを読み解くことによって,人間と地域との関わりを理解することが可能である。
 地域との関わりといっても,現場第一主義で,実際に現地を訪れないと何も分からないということではない。日常の風景や観光写真一枚からでも,そこで生活する人びとの表情や服装,町並みの様子から,生活文化は伺えるものである。また,現地の歴史や地図,統計からの情報を加えると,表象に覆い隠された地域性を見いだすことができる。
 人間は周囲の自然環境の制約を受けつつも,それを克服・改変しながら,自分たちの生活空間を生み出してきた。人間の手が加わっていない景観(自然)に人間活動が作用されて形成された景観(人文)を地理学では文化景観と呼んでいる。米国の地理学者Sauer,C.Oは,人間生活の総体としての文化が景観を生み出す営力として作用し,時間の経緯とともに景観が形成されるとした。身の回りの景観を注意深く観察することによって,地域と人間との関わりを知ることが可能である。近年では,景観が社会的に構築される過程に注目し,その主体の果たす役割に焦点をあてたり,景観が示す象徴的な意味を探求する研究が盛んに行われている。
 日本でも1960年代以降,海水浴やスキーなどの野外レクリエーション,1980年代にはテーマパークやリゾート開発が盛んになり,観光地域が拡大してきた。しかし,1990年代半ばから,旅行支出が減り,安くて、近くて、短期間の旅行が好まれるようになり,観光産業の利益も減少した。一方,身近な都市や農村を訪れて,地域の豊かな文化や自然環境,景観そのものを楽しむ観光も見直されてきている。今後はこれらの観光を,そこで暮らす人びとを主人公とした地域づくりや地域の活性化に結びつけることが課題である。
 
2 フィールドを歩いて地域を地域を調べる
 「地域の特徴を明らかにしようとする」地理学の課題に取り組むには,直接現場に出かけて調査する,いわゆるフィールドワークが欠かせない。
 それぞれの地域には,その土地の自然や歴史と深く結びついた人びとの暮らしや生業がある。住民の暮らしぶりは地域によって異なっており,それゆえ土地に生きる人びとの様子を知ることによって,地域の特徴を明らかにすることができるようになる。
 ある地域で人びとはどのような暮らしをしているのか。その様子はその土地固有の景観にあらわれることが多い。ビルや商店などが密集した都市の景観,農家や農地が目立つ農村の景観など,いずれも地域の特徴をつかむ重要な手がかりになる。ここでいる「景観」とは,地形や植生などの自然環境とともに,地域で暮らし,そこで活動する人びとによって作られた建築物や土地利用を合わせた総体を示す。ただ,漠然と現地を歩いただけでは地域の特徴を捉えることはできない。事前にインターネットで初歩的・基本的な情報を得ておいたり,新聞や書物などで現地の抱える問題(過疎化や環境破壊,言語や宗教など)を整理しておいたりしておきたい。また,日本国内であれば,市町村などの公的団体のサイトを利用することによって,地域の歴史や産業など多面的に,かつ即時的に把握することが可能である。
 また,地域に住む人びとの暮らしぶりは,住民から直接話を聴くことによって,さらに詳しくわかってくる。商店や工場,農家や学校の人びとの生活を知るための資料を得ることができる。さらに地域の人びとに対して聞き取り調査を行うことによって,彼らの具体的な生活の様子がわかり,それが地域の特徴をとらえることへと進んでいく。聞き取り調査も単なるおしゃべりに終わってしまっては,他者理解以上の地域生活の理解には繋がらない。フィールドノートを持参したり,記録や統計などを用いたりして,生きている社会調査にまで踏み込みたい。

参考文献
『新編詳解地理B』(二宮書店 2013)
高橋伸夫他『改訂新版ジオグラフィー入門』(古今書院 2008)

地理学 第4課題

一 世界のEnergy・鉱物資源
 近代工業の発達のためには,大量のEnergy資源や鉱物資源を必要とする。世界では09年段階石油換算で120億tもの一次Energyを消費しており,日本だけでも石油換算で5億tものEnergyを消費している。近年,再生可能Energyの開発が進み,10%を超えるまでになっている。石炭は年間53.5億t産出され,Energy消費全体の27.2%を占めている。産出量は中国が5割を超え,America,Indiaと続く。輸出はAustraliaが3割弱,Indonesia,Russiaと続く。輸入は日本,韓国,Indiaと続く。石油はEnergy消費の3割を占め,1960年代の「Energy革命」以降,石油の利権を巡る領有権争いが絶えない。石油の多くは褶曲構造地層の背斜部に存在し,埋蔵量の半数が中東に集中している。年間の輸出量は20.1億tであり,Saudi Arabia,Russia ,Iranと続く。天然ガスは油田上部に滞留する石油系ガスと,有機物の腐敗によるメタン系ガスに分類され,環境負荷が小さく埋蔵量も多いため石油の代替として注目され,世界のEnergy消費の2割を占めている。輸出はRussiaが21.6%,Qatar,Norwayと続く。輸入は日本が10.4%で,米国,Germanyと続く。また,近年は地下の頁岩に閉じ込められたShale Gasを取り出す技術が確立され,米国を中心に開発ブームが起きている。
 電力は水力・石炭・石油などから作られる2次Energyである。水力,火力,原子力,その他の地熱や風力発電で構成され,Energy資源の有無やEnergy政策の違いを反映して,国によってその構成比は異なる。日本は1960年代まで水力が5割を占めていたが,徐々にその比率を落とし,09年段階で水力8%,火力71%,原子力が20%となっている。しかし,福島の原発事故以降,原子力発電の稼動は止まり,14年現在,太陽光発電を中心とした再生可能Energyが伸びている。
 鉱物資源は金属資源と非金属資源に分けられ,金属資源には,鉄資源の鉄鉱石と,非鉄金属の銅鉱,Aluminiumの原料となるBauxiteや鉛鉱,亜鉛鉱などがある。「産業のコメ」と呼ばれていた鉄の材料となる鉄鋼石は安定陸塊地域に多く,Brazil,Australia,中国の3カ国で産出量の約6割を占めている。日本や欧州の多くの国は,鉄鋼石のほぼ全量を輸入に依存している。銅鉱石は新期造山帯に多く埋蔵し,Chilei一国で世界の約3分の1を産出している。Bauxiteは,熱帯やその周辺に多く産出し,Australia一国で世界の3分の1を産出している。また,先端技術産業の発展とともに,希少金属の需要も拡大しているが,資源の偏在性が大きく,政治的に不安定な地域に多いため,国際的な供給の整備が求められている。

二 世界の環境問題
 Congo川流域,東南Asia,Amazon川流域の3つの熱帯雨林は,地球上の全面積の7%にすぎないが,生存する植物体の量は地球上の陸上植物の41%,生産量では30%を占めている。しかし,先進国資本による大規模農場や牧場のために,AfricaとSouth Americaでの減少が著しい。Brazilでは2000年から10年間で,264万haも消失している。熱帯雨林は生物多様性だけでなく,気候環境や地球温暖化などに多大な影響を及ぼすために,国際的な観点からの認識と協力が求められる。
 乾燥地域の砂漠周辺では,植生が乏しくなり裸地化して土壌浸食を起こす砂漠化が広がっている。森林や草原の過伐採や過放牧が進んだことが大きな原因である。砂漠化が進行してしまうと,周辺の気象環境も変わるため,元の環境に戻すことは難しくなる。特にSahara desの南の縁にあたるSahel地域やTakla Makan砂漠,Great India砂漠周辺ではDust Stormも発生し,住民生活を脅かしている。
 酸性雨とは大気中の汚染物質が雲や降雨の中に取り込まれ,ph5.6以下となったものである。森林や街路樹を枯らしたり,土壌や湖沼の酸性化を招いたり,野外の彫像を溶かしたりすることもある。1979年に条約が締結され,広域的な対策が取り組まれている。
 この百年間で世界の平均気温は0.68度上昇しており,温暖化が顕著に進行している。化石燃料を大量の消費するようになった結果,大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度が増加していることが原因として考えられる。1997年には温室効果ガス排出量の削減目標を定めた京都議定書が採択され,今後さらに排出増が見込まれる中国やIndiaなどの新興国を含めた話し合いが続けられている。
 成層圏には日射中の紫外線を吸収するOzone層が分布している。冷蔵庫の冷媒やスプレーなどで広く使われていたフロン類がOzone層の破壊原因である。1987年にOzone層破壊に関するMontreal議定書が採択され,フロンの製造と輸出が禁止されたが,フロンの影響は21世紀半ばまで残るとみられている。

参考資料
『新編地理資料』(東京法令出版)
『新編詳解地理B』(二宮書店)
西沢利栄『アマゾンで地球環境を考える』(岩波ジュニア新書 2005)

地理学 第3課題

一 人口分布の地域的特色
 人間が日常的に居住している地域をÖkumene,居住していない地域をAnökumeneという。人口の増加や環境の変化などにより「人類は移動・拡散し,未開地を開拓してÖkumeneを拡大してきた。およそ70億人もの人口を抱える現在,全陸地に90%が開拓されてきた。
 人間の居住限界には,水平限界と高距限界があり,水平限界には,さらに,寒冷限界と乾燥限界とがある。寒冷限界は,Ökumeneの両極地方への限界であり,tundra気候の最暖月平均気温10度の等温線とほぼ一致する。乾燥限界は,砂漠気候の年降水量250㎜の農業限界線とほぼ一致する。高距限界は気温との関係が密接であるが,およそ標高3500mの森林限界とほぼ一致する。
 世界の平均人口密度は10年現在50.7人/㎢となっている。しかし,その分布は,Asiaでは130.6人/㎢,Oceaniaでは4.3人/㎢となっており,自然環境だけでなく,土地利用や産業構成,経済の発展段階などによって異なる。

二 国家
 冷戦の終結後,ソ連の解体に伴い独立国が増加して,現在約200カ国ある。独立国は,「主権,国民,領域」を有しており,これらを国家の三要素と呼び,国際法上の国家の承認要件となっている。
〈主権〉主権は,他国からの制約を受けないで,独自の政治を行う,最高,独立,絶対の国家主権である。基本的義務として条約履行,不干渉などが課せられている。主権は支配下の住民と地域性の如何に関わらず,その国内に政治的統一性をもたらす方策を作りだすものである。
〈国民〉国民とは国籍をもつ国家の構成員である。一つの民族が一つの国家をつくるという国民国家の考え方は,近代Europeで発達したものであるが,現実の世界では,全ての国民が一つの民族に属するという「単一民族国家」はほとんど存在せず,多くが複数の民族からなる「多民族国家」である。
〈領域・国境〉領域は国家主権の及ぶ範囲であり,領土・領海・領空からなる。領土の境界である国境は大きく自然的国境(SpainとFranceの境界となるPyrénées mountainsやAmericaとMexicoの境界であるRio Grande river)人為的国境(LibyaとEgyptを分ける東経25度線)に分けることができる。領海は領土に接している一定幅の海域で,一般に12海里(22km)まで認められる。領空は領土と領海の上空であるが,宇宙空間までは及ばない。また,沿岸から200海里(370km)までの海域が排他的経済水域とされ,水産資源や鉱産資源などに対して沿岸国の権利が認められている。この条約によって,日本はEEZの面積が国土の10倍に広がっているが,公海全体が狭められたため,遠洋漁業に大きな打撃を受けた。

三 人種
 人種は,身長の大小や皮膚・毛髪の色・頭の形状などの身体的特徴に基づく分類であり,Mongoloid・Caucasoid・Negroidなどに分けられる。Mongoloid(黄色人種)は黄色から銅色の皮膚,太く黒い直毛,体毛は少なく,褐色の目をしているのが特徴である。Asiaを中心に分布し,日本人も含まれる。Caucasoid(白色人種)は白色から褐色の皮膚,体毛は多く淡青や暗褐色の目,高い鼻が特徴である。Negroid(黒色人種)は黒色の皮膚,縮れ毛の頭髪,体毛は少なく,褐色の目と低く幅広い鼻が特徴である。

四 民族
 民族は,言語・宗教・生活様式などの文化的特徴に基づく分類である。その中でも言語は人々が文化集団内で生活を営む際に互いに意志を通じ,世代間で文化を伝達する手段であり,最も基本的な文化の構成要素であると言える。Asia系・Europe系・Africa系に大別される。
〈Asia系〉言語的にはChina/Tibet語族,Ural語族,Altaic語族があり,12.1億人が使用する中国語が含まれているため言語人口は多い。また,多くの地域で仏教,儒教,道教などが,TibetではLamaismが信仰されている。Ural語族Hungary語,Finland語,Estonia語などが含まれる。
〈Europe系〉言語的にはIndia/Europe語族やAsia/Africa語族などが含まれる。India/Europe語族にはEuropeやRussian,西Asia,Indiaにかけて分布しており,Spain語やPortugal語,英語,France語などは南北AmericaやAustraliaなどの「新大陸」で広く話されている。宗教はChristianityが多い。また,Afro/Africa語族も含まれ,Hebrew語やArabia語を話すIslam教徒も多い。
〈Africa系〉北緯5度以南の地域でNiger/ Kurdufan諸語が使用されている。

参考文献
『新編詳解地理B』(二宮書店 2013)
『新編地理資料』(東京法令出版 2012)

地理学 第2課題

一 Plate Tectonicsの考え方
 地球表面は,平均の厚さが100kmほどの幾つかの硬い岩石の板で覆われていると考えられている。これらの板をPlateといい,一つ一つのPlateはその下のMantleがゆっくり対流することにより,様々な方向に移動する。大洋中の海嶺で地球内部から上昇したMantleは,少しずつ水平方向に進み,海溝の部分で地球内部に沈んでいく。
 Plate同士の運動の型は,3つの型に分けられる。二つのPlateが互いに離れようとする境界を,“広がる境界”とよぶ。海底にある広がる境界には,地球内部のMantleからMagmaが噴き出して,海嶺と呼ばれる海底火山の高まりがつくられる。Africa大陸東部の大地溝帯やIcelandのような陸地に連なる広がる境界には,地溝の裂け目に沿って噴火を起こす火山が見られる。二つのPlateが水平にずれている境界を,“ずれる境界”といい,そこでは長大な横ずれ断層がつくられる。北America Plateと太平洋Plateの横ずれにより大地震を起こしたSan Andreas断層は,この代表例である。
 二つのPlateが互いに近づく境界を“狭まる境界”という。狭まる境界には,大陸Plateどうしが衝突し,Alps山脈やHimalaya山脈のような高く険しい山脈をつくる境界(衝突型)と日本海溝のように海洋Plateが大陸Plateの下に沈み込んで海溝をつくる境界(沈みこみ型)とがある。この沈みこみ型境界では,Plateどうしの接触面がずれて海溝型地震がおきたり,海底の地盤の動きに伴って津波や火砕流が発生することがある。2004年のSumatera沖地震や2011年の東日本大震災の津波災害はその例である。また,1991年の雲仙普賢岳の火砕流も,沈みこんだ海洋Plateの一部が溶けてMagmaとなって地表に噴出したものである。
 日本列島で地震や火山爆発が多発するのは,大陸Plate(同Eurasiaと北America)の下に海洋Plate(同太平洋とPhilippine海)がもぐりこむ,狭まる境界に位置しているためである。
 こうした一連のPlateの生成や分裂について,Mantle中の巨大な茸型の上昇流に拠って説明するPlume Tectonicsの研究が進んでいる。

二 世界の地帯構造
 〈新期造山帯〉Andes・Alps・Himalayaなどの山脈は,高くて長大な険しい山脈である。またAleutian列島や日本列島なども,大洋底を基準とすると大山脈となる。これらの地域は中世代後期から現在に至るまで新しい山地・山脈が成長しているところであり,中世代後期から新生代に造山運動が生じた新期造山帯と呼ばれる。環太平洋造山帯とAlps=Himalaya造山帯とからなる新期造山帯は,Plateの境界に位置していることが多く,地震などの地殻変動や火山活動が活発な地域となっている。Magmaの作用によってできた銅,銀,すず,亜鉛などの非鉄金属資源に恵まれている。
 〈古期造山帯〉AppalachianやUralなどの山脈は,低くなだらかである。これらの地域は,古生代に起こった造山運動によりつくられた山地であり,古期造山帯とよばれる。古期造山帯は,造山運動が止まり長期間の浸食を受け続けいるため,現在ではゆるやかに起伏する山地・山脈が多い。古期造山帯では,古生代後期に繁栄したシダ植物の森林が堆積し,炭化してできた良質の石炭が多く産出される。
 〈安定陸塊〉東Europe平原やAmericaの中央平原などは,広大な平野である。これらの地域は,先Cambrian時代に造山運動を受けて山脈がつくられたものの,古生代以降に長年にわたって広い範囲が侵食され続けて平坦になったところであり,安定陸塊とよばれる。侵食平野が広い範囲にわたってゆっくりと隆起した地域では,Brazil高原やDeccan高原などのような大規模な高原がみられ,鉄鉱石などの開発が盛んな地域と重なる。安定陸塊には,先Cambrian時代の岩石が地表に表れている盾状地と,古生代以降に一時的に海面下になって土砂が水平に堆積し,その後に陸化して地表が侵食を受けた卓状地とがある。盾状地の侵食平野の多くは準平原となっており,卓状地では地層の構造が地形に繁栄された構造平野となることが多い。

三 山地の地形輪廻
 Americaの地形学者Davisは,地形変化の過程を人間の一生になぞらえた。内的営力である地殻運動で隆起した山地や高原は,外的営力である河川などの侵食を受け,谷が形成されはじめる幼年期,谷密度が高まり地形の起伏が大きくなる壮年期,山地の高度が減じて谷も広く丸みを帯びたようになる老年期などの段階を経て,最後には海面とほぼ同じ高さに広がる平地(準平原)になると考えた。さらに,平原が地殻運動などで隆起する、あるいは侵食基準面が相対的に低下すると,再び侵食が始まるという輪廻を繰り返すとした。

参考文献
『新編詳解地理B』(二宮書店 2013)
『新編地理資料2013』(東京法令出版 2012)