『社会主義市場経済の中国』

渡辺利夫『社会主義市場経済の中国』(講談社現代新書)を読む。
社会主義の中国における市場経済というと、日本人の感覚に照らすに国鉄や電電公社の民営化のようなものに捉えがちである。しかしこれまでの日本の歴史にはないことが90年代を通して中国で行われてきたことが分かる。著者はまとめとして次のように述べる。

計画経済から市場経済への転換が主題なのではなく、自給的自然経済から商業的農業、農村工業化へと転換する過程でうまれた市場経済化が、ここでの「主題」なのである。中国の市場経済化が順調に進みえたのは、それが経済発展の「一般型」に沿うものであったからであり、おくれた農業発展段階からその市場経済化が開始されたからでもある。

中国という国は、封建制と帝国による植民地支配から、毛沢東がカリスマ的な人気を背に一気に社会主義体制に仕立て上げた国家である。それゆえに毛沢東の目指した方向は現実の中国の状況から大きく「乖離」したものであった。そうした矛盾は文化大革命によって露呈してしまうのだが、その内紛をうまくまとめたのが鄧小平であった。鄧小平は他国の共産主義国家と異なり、共産党一党独裁体制を崩さずに市場経済を導入した。中共の言うところのマルクス主義解釈はすでに神学論争の域に入っているが、マルクスやら毛沢東やらをアイドル化する中で、競争原理を働かせていく手法は新しいようで古くさい手法である。

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