内橋克人『浪費なき成長』(光文社 2000)を読む。
内橋氏は神戸出身で、神戸の震災復興策が日本型経済を象徴していると述べる。神戸の震災復興で当時の政府がもっとも力を入れたのは道路や橋、港湾施設、鉄道などの「マクロ生産基盤」の回復であった。しかし、当時の村山首相の「自然災害に個人補償はない」という声を裏付けるように、被災地の人々の暮らしは震災前よりも明らかに生活水準が低下し、失業率は回復の兆しを見せていない。阪神大震災から今年で10年経ち、高速道路や駅など見る限り震災の傷跡は既に完治したように見える。しかし、そこに暮らす人々の生活は何百兆円の赤字国債の穴を埋めるに、敢えて莫大な公共投資による経済浮揚を計るような「浪費」を重ねるのではなく、「生きる」「働く」「暮らす」という、これまで分断されてきたものを統合しようという方向を目指さねばならないと述べる。
『浪費なき成長』
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