『平家物語を読む』

永積安明『平家物語を読む:古典文学の世界』(岩波ジュニア新書 1980)を読む。
年明けに平家を扱うので、教材研究として手に取ってみた。学生時代にレポートが間に合わず、テキトーに文字を埋めるために購入したものだ。

『ジュニア新書』とはいえ、原文も多く収録されており、大変興味深く読むことができた。平忠盛や平忠度、平知盛、俊寛や文覚など、これまであまり知らなかった人物の歴史に翻弄される人生ドラマが描かれる。そもそも古典の教科書には平清盛、木曽義仲、源義経に加え、熊谷直実と敦盛の場面くらいしか掲載されない。私もその作品だけで平家の衰亡の通底に流れる「諸行無常」「盛者必衰」のテーマを知ったつもりでいた。しかし、平家だけでなく、源氏、さらには天皇までもが時代の怒濤のような流れの前には為す術もない現実がある。
著者は次のように語る。

『平家物語』という作品は、平家一門をも、また彼らを滅ぼした源氏をも、さらにまた平家といわず源氏といわず、およそこの世に生を享けた、ありとあらゆる人間のすべてを貫いて実現してゆく、無常の運命そのものに迫っているということになるのである。

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