第17回小説すばる新人賞受賞作、三崎亜記『となり町戦争』(集英社 2005)を読む。
隣り合わせに位置する二つの町が行政施策の一環として戦争を始めるという奇妙な設定の物語である。町役場のカウンターの一角に「総務課となり町戦争係」が設置され、限られた予算や時間、住民の生活を乱さない範囲で戦争が遂行される。そのため、戦争がいつ始まったのか、どこで行われているのか、いつ終わったのか、戦時特別偵察業務従事者に選ばれ戦争に加担している主人公にも皆目検討がつかない。
最後まで物語の世界観は杳として分からない。しかしこの戦争への実感のなさが、現在の戦争の側面を見事に顕している。戦争の外注といったあたりは、数年前に観た押井守監督の『スカイ・クロラ』を彷彿させる。