山本宗補『ネグロス:嘆きの島』(第三書館 1991)をパラパラと読む。
フィリピンで4番目に大きいネグロス島で起きた武力衝突や難民、貧困、プランテーション、NGO活動、国際結婚ビジネスなど、嘆きしかない島の惨状を写真と共に紹介している。
特に日本にエビを輸出するために、砂糖キビ畑を潰して、一面エビ養殖場のプランテーションに様変わりした写真が印象に残った。近年はインドやベトナム、インドネシアからの輸入が多いが、1980年代はフィリピンでも日本に輸出するために汽水のマングローブ林を伐採してエビの養殖場が次々と作られていった。しかし、ネグロス島で生産されるエビの身のほとんどが日本に輸出され、島の人々にはエビの頭の部分しか回ってこない。
その他、学生時代に先輩が批判していた財団法人オイスカ(NGO)の問題や丸紅による銅鉱山開発による自然破壊など、ネグロス島を取り巻く問題について丁寧に論じられている。しっかりと現地を回ってインタビューを重ね、現出される問題点の背景にメスを入れていく、ジャーナリストとしての姿勢が伺われる。