『カラー版・奈良の散歩みち』

光明正信・塚本珪一『カラー版・奈良の散歩みち』(山と渓谷社 1983)をパラパラと読む。
タイトル通り、奈良の名所を辿る散歩みちがカラー写真で紹介されている。東大寺や法隆寺などの国宝級の有名どころから、大和三山から吉野山などの自然、果ては風化が進み苔に埋もれてしまった仏像や、崩れかけた街道の道標などの名前もないものも取り上げられている。寺社仏閣や仏像よりも、田んぼの畦道や山中に忘れ去られた石仏の方が興味深かった。
著者は次のように述べる。

奈良は歩く所である。そして心で味わう所である。そのためには古代史、『万葉集』、仏教美術などについての知識が多少なりともあれば、どれほど楽しいか。ただ漫然と歩くことも悪くはないが、自分の心の中にあるものを引き出しつつ、眼前のものと対する、それは古代への散歩でもあり、古代人との対話でもある。「奈良の散歩みち」は自己の発見の道でもある。