進藤榮一『敗戦の逆説:戦後日本はどうつくられたか』(ちくま新書 1999)を読む。
戦前の1940年代体制へ憧憬や、戦後のGHQの押し付け憲法や政策が日本を間違った方向に誘導したとする一部の「保守層」の我田引水な歴史観に対して、戦前から戦後にかけての日米の政治家や官僚の発言や文書から丁寧に反論を展開している。
新書なのだが、歴史の大まかな流れの概説を省いて、いきなり専門書レベルの内容に入っていくので、筆者の言いたいことは良く分からなかった。
戦前日本にあって、全就業人口の5割が農業に従事しながら、農民の3分の2は小作農であり、農地の過半を占める水田の50%は小作地であった。そして小作農は、収穫の50〜60%に及ぶ小作料を地主に納めることを法的に義務づけられて悲惨な生活を送らざるをえなかった。(中略)しかも小作料自体が農業に再投資されることが少なかったために、農業生産性はほとんど向上せず、全就業人口の半分近くが農業に従事しながら、戦前期にあって日本は米の自給すらできなかった。それが、台湾や朝鮮などの外地から大量の米を輸入させながら、満州を含めたそれら外地に大量の人口を”植民”させ、したがってそれら周辺諸地域に植民地として獲得し拡大する動きを嚮導していかざるをえなかったのである。