小川忠博写真、小野正文・堤隆監修『縄文美術館』(平凡社 2013)を眺める。
遺跡は特別な場所にあるというイメージが一般的だが、文化庁によると現在登録されている遺跡は全国で46万ヶ所もあり、ビルの下から原野まで広がっている。縄文時代は長い旧石器時代を経て約1万6000年前から始まる。農耕はしていなかったものの、狩猟採集したものを煮炊きしたり保存したりする習慣を有し、かさばって重い土器は移動から定住へ移行したことを示している。また、新潟県姫川河口域で加工されたヒスイや産地の限られる黒曜石、一定の様式の装飾品などが全国で出土することから、かなり広域の交易網があったことが伺われる。
石器時代や後々弥生時代の「繋ぎ」のようなイメージが強いが、鹿児島県薩摩硫黄島の鬼界カルデラの大噴火や温暖化による海水面上昇、弥生時代初期にかけての寒冷期など、気候変動や自然災害に柔軟に対応して生活や文化を発展させてきた縄文人のしなやかさが垣間見える。