『慶應幼稚舎』

石井至『慶應幼稚舎』(幻冬舎新書 2010)を読む。
筆者の漏らすように、「名門の家庭でお金持ち、センスもよくて都会的、スマートだがスノッブな人物」というステレオタイプな先入観が強い慶應大学付属の小学校である幼稚舎の入門書となっている。校風や学校生活から、受験のノウハウ、さらには志願書に論述しなくてはならない福沢諭吉の教育思想まで丁寧にまとめられており、幼稚舎受験に欠かせない一冊である。
幼稚舎では、「先ず獣心を成して後人心を養え」という福沢諭吉の考えに従って、徹底して体を鍛えることに重きが置かれる。また6年間変わらないクラスの中で、一人一人が個性を伸ばす環境が整えられる。明治の初め1874年に開校されているのだが、大正自由教育の考えを先取りするような教育方針となっている。
ただし、良い面だけでなく、中学校や高校で落ちこぼれになったり、社会に出ても競争に弱い良い子ちゃんで終わってしまったりと、負の面もしっかりと書かれており、他校との比較も含めバランスの良い内容となっている。

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