野村克也『野村の「眼」:弱者の戦い』(KKベストセラーズ 2008)を読む
指導者論のレポートは既に郵送してしまったのだが、折角買ったので読んでみた。
楽天監督3年目を迎える年に書かれた本である。
これまで読んできた著書と内容的には大差のないものであった。
あとがきのなかで、野村氏は次のように述べる。
私は「自己コントロールとは、欲から入っていかに欲から離れるか」が最重要だと信じる。これが勝負事における最大のテーマだと考えている。絶好球が来たと思って、ほんの0.何秒あせってバットを振り、チャンスをふいにする。最後はストレートで格好よく三振を取りたいと欲を出して痛打を浴びる。欲から入って欲を離れることができず、失敗した例をこれまでにも数多く見てきた。
だからといって、欲望そのものがなくなっては進歩はできない。では、進歩とは何か。私は自問自答する。
人間、沈まないとジャンプはできない——それが謙虚さであり、素直さである。それがなければ進歩はない。——すなわち考える力、感じる力、備える力に発展していく基である。傲慢な人間には、現状維持も伸び率もない。ただ下降線を辿っていくのみである。そしてどんどん底に落ちきって、気付くのである。人間の悲しい性である。
“進むときは上を向いて進み、暮らすときは下を向いて暮らせ”
私が七十二年の人生から得た教訓である。