小笠原祐子『OLたちの〈レジスタンス〉』(中公新書)を読む。
多くの会社において一般職の女性が「女の子」と総称され、総合職男性よりも一段と低い地位に置かれる現状を、OL女性の総スカン攻撃やバレンタインデーから分析した論文で興味深かった。
一般職のOLは会社の組織の中で出世の道を断たれ、大きなミスを犯してしまう以外に賃金格差も生じない存在である。そのような個のありようが認められない状況下では、「社内妻」という役割しか与えらず、必然的に「寿退社」していくことだけが「出世」とならざるを得ず、「女の敵は女」という構図が恣意的に作られてしまう。そして社内での仕事の不出来に差がつかない以上、上下関係も曖昧で、一般職OL間に摩擦が生じやすい。そうした中では、総合職男性や管理職のおじさんのゴシップは、だれ一人傷つかないOLの仲をとりもつ格好の潤滑油となってしまうのだ。
またバレンタインデーがチョコレート会社の策略によるところは広く知られたところであるが、特殊会社内のバレンタインデーの分析も面白かった。バレンタインのチョコは一般的には好きな人にあげるという愛情表現と理解できるが、義理チョコという習慣が徹底された会社組織においては、あげる人と、あげない人を明確化する示唆性を有するようになる。また同じあげるにしても高いチョコをあげるのか、安いチョコをあげるのかで、男性を序列化する記号となる。男性側からは表面上、愛情というファクターを有するため、もらえなかったとしても抗議の声を上げることができない。こうしたバレンタインデーのチョコを「弱者の武器」と分析する作者の視点に賛同する点も多かった。