吉本康永『ぐうぜん東大に合格させる法:たそがれ親父の家庭づくり大作戦』(三五館 2000)を読む。
群馬県で予備校講師をする傍ら、三人の子どもをそれぞれ信州大学医学部、茨城大学人文学部、東京大学文3に合格させた子育ての秘訣を語る。秘訣といっても入試問題の解法や受験攻略といった受験の指南書でなく、礼儀や躾など親として至極全うな子育てこそが、子どもを伸び伸びと着実に育てる柱であると述べる。
吉永氏は子どもを現役で東大に合格させるルールとして次の6つを指摘する
1.家庭内で夫婦喧嘩をしない
2.合格するまで離婚は×
3.東大東大と、言いふらさない
4.子どもを傷つけることは言わない
5.他人と比較しない
6.父親が子どもを責めたら母親がなぐさめる
つまり、子どもが常に親の愛情を直に感じ、父・母という複数の視点で評価され、家庭内に何人にも替えられない自分の居場所が確保されることが東大合格の秘訣だというのである。これは東大合格というよりも育児・教育の原点である。と同時に、子どもに1対1で接し、多様な視点で評価し、誉めることが育児・教育の全てなのである。吉永氏はその上で子どもの学力を伸ばすには挨拶、生活リズムに加え、幼稚園・小学生時代の国語力と効率的な詰め込み教育が肝要だと述べる。
私も著者の意見に首肯する点が多い。東大だ京大だと騒ぐが、所詮大学入試なんて読書量と暗記とパターン解法である。そのどれも特別な才能なんて要らない。ましてや体力や美貌、家柄や宗教など全く不問である。いたずらなテクニックや勝手な決めつけに惑わされず、読書の面白さを促し、最低限の暗記事項を明確にし、パターン解法を繰り返す、そうしたことに我慢できる育児・教育を徹底したい。要は我慢できる力の育成である。
「この子は頭がいい、頭が悪い」などという話をしている時に、だれもアインシュタインのことも、ノーベル賞のことも考えていない。しょせん、小学校、中学校、高校の成績を話をしているのだ。こんなものは単に努力をすればなんとかなるものだ。そのことをまず親が信じなくてはならない。親がうちの子どもは才能がないと思った瞬間に、子どもの可能性の芽は潰されるのだ。