学習・学び」カテゴリーアーカイブ

生徒に送った言葉

〈生徒に送った言葉〉

ご卒業おめでとうございます。
昨年度は古典ないし現代文を、今年度は現代文を担当しました。特に今年度の2学期には、試験を挟んで約2ヶ月、森鴎外の『舞姫』を扱うことができ、国語科 の教員冥利につきる日々でした。授業の中でも触れましたが、『舞姫』の主題は、日清・日露戦争へと突き進む国家の土台を築いた山県有朋(天方伯)について いくか否か迷った挙げ句、最悪の形で帰国(出世)の道を選んだ主人公太田豊太郎の決断にあります。
文学というのは、個人の内面を通して社会を見る、また社会の動きが個人の悩みを誘発する、そうした個人と社会のつながりを表すものです。高校の国語の授業 で、『羅生門』『山月記』『こころ』『舞姫』と近代文学の代表的な4つの作品を扱ってきましたが、どれも登場人物を巡る社会状況と心の葛藤がテーマでし た。
さてこれからはみなさん自身が「文学」を紡いでいく番です。様々な登場人物がぶつかり、政治や経済が揺れ動いていく手に汗握るドラマを演出してください。

「高等学校における発達障害の支援~特別でない特別支援教育~」

本日の午後、さいたま桜高等学園で開かれた公開講座に出かけた。
京都府立朱雀高等学校で特別支援教育に関わっている島貫学氏の「高等学校における発達障害の支援~特別でない特別支援教育~」と題した講演を聞いた。
島貫氏は京都市内の普通科高校に勤務され、教務部という立場から「気になる生徒」のフォローを担当している。特別支援教育というと生徒指導部もしくは保健部の一部の教員が担当するものと相場が決まっているが、島貫氏は、普通科高校では学習のつまづきや欠課が嵩み、単位認定に大きく絡んでくるので、教務を中心に情報の共有化を計ることを提案している。また、入試を経て入学してきているので、「障害」の診断を前提に話を進めていくのではなく、あくまで普通科の教育スタイルの中で可能な個別の対応、誰でもが分かりやすい授業、公平な教員の接し方などが大切だと島貫氏は述べていた。
それに比べ、文科省や埼玉県の押しつけ的な「特別支援教育」や「個別の指導計画、支援計画」「校内委員会制度」は、教員の負担感が大きく、拙速な施策であることは否めないであろう。

また、特に発達障害は障害だけを見るのではなく、発達の「凸凹」と捉え、落ち込んでいる面だけを見るのではなく、秀でている面を同時に見る必要があると島貫氏は述べていた。
よく議論になる障害の「ガイ」の字の表記について、島貫氏は、表意文字である以上漢字をひらがなに直すだけでは解決にならないと述べる。そして「行く手をさえぎるような石を見つける」という意味の「碍」の字や、「石の前でためらい、足をとめる」という意味の「礙」の字を当ててみてはと提案している。

『子どもの貧困・格差を考える集会』

埼玉教育フォーラム主催『子どもの貧困・格差を考える集会』に参加した。
元埼玉大教授鎌倉孝夫氏は、主催者挨拶で、相対的貧困率が15.7%に達した事実を挙げ、高校授業料無償化といった対処療法的な対応は一定の評価はできるが、まだ不十分であり、教育基本法の精神を取り戻す根本的な解決が求められると述べた。

続いて、なたにや正義民主党参議院議員が壇上に上がり、政務三役の連携により、政府と与党が一体化され、より迅速、適切な政権運営が可能となったなどの国会情勢報告が長々となされた。

そして鳫咲子・早稲田大学非常勤講師の「子どもの貧困と就学援助制度=失われた教育の機会均等=」と題したが行われた。生活保護もしくはそれに準じる保護者の子弟に対する就学援助制度対象者はこの10年間で2倍、全国で7人に1人になるという。この背景にはリストラなどの就業環境の変化とひとり親家庭の増加が2大要因である。特に母子家庭の世帯平均所得は243万円であり、その4割が200万円以下の年収しかない。

就学援助制度とは、憲法第26条の「教育を受ける権利」および、教基法第4条の「奨学の措置」に基づき、学校教育法第25条・第40条「経済的理由により就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」によって制度化されている。しかし、三位一体改革によって一般財源化され市町村に委譲されてから、自治体によって運営に差が生じ、必要なところに行き届いていない現状があるという。鳫さんは、シビルミニマムを確保するために、適切な情報提供と関係者間(学校・福祉・NPO等)の連携、情報の共有を提唱する。

生活保護の概要や申請方法については、3年前の社会福祉士国家試験の際に勉強したはずなのに、記憶からすっぽり抜け落ちていた。せっかくの勉強が無駄になっている、、、。。。

入試動向説明会

本日は河合塾主催の、教員を対象とした来年度の入試動向説明会に参加した。
30数万人が受験したマーク模試の結果の分析から、的確に来年度の動向を予測していた。担当方は、昨年との比較や日程・入試制度の変更、社会の流れなどの情報を加味して、受験生の出願の動きを早口でまくし立てていた。断定調で語られる説明を聞いていると、何やら株屋や競馬の予想に聞き耳を立てているような気分になってきた。

初代のEU大統領

19日夜(日本時間20日未明)に、初代のEU大統領(欧州理事会常任議長)にベルギーのヘルマン・ファンロンパイ首相(62)、外相(外交安全保障上級代表)に英国元上院総務のキャサリン・アシュトン欧州委員(53)らが、それぞれ欧州連合(EU)の緊急首脳会議で選出されたとのニュースが流れた。

この麻雀の役のような名前のベルギー首相に決まった背景には、イギリスの主導権を抑えたいドイツやフランスの影響があったようである。このニュースを聞いて、地域統合のパワーバランスにおける「大陸」の強さを感じた。鳩山首相も「東アジア共同体構想」を掲げているが、EUにおけるイギリスと同様に、島国が主導権を握ることに対して大陸の国家は潜在的に不快感をしめすのではないだろうか。
歴史を紐解いてみても、時の日本政府のアジア政策において、日本は島国であるという決定的な視座が欠けてきた。「東アジア~」もEUをじっくりと研究して、経済や政治だけでなく、言葉の壁、歴史認識の壁、宗教対立の壁を乗り越えて、それぞれの地域が独自性を維持しながらも、環境や平和を軸に共存できる道を模索するべきである。その道はEUをじっくりとよりも長く困難であろう。