読書」カテゴリーアーカイブ

『となりの「愛犬バカ」』

勝俣和悦『となりの「愛犬バカ」』(祥伝社新書,2008)を読む。
著者は帯広畜産大学を卒業され、ペット全般に関わるペットコンサルタント・コーディネーターを生業としており、2万頭のペット犬と、3万人の飼い主と関わってきた人物である。
そんな専門家の著者が、飼い主の無理解によって飼い犬が迷惑している点を、犬の性質を踏まえて丁寧に説明している。また、犬は1万4、5000年前から人間と一緒に生活していたらしい。

大半さらっと読み飛ばしたが、飼い主の「ケージに閉じ込めるのは、かわいそう」という項が興味をひいた。飼い主は家の中でも広々としている部屋ならゆっくりとくつろげるはずだと考えがちである。しかし、犬にとっては広くて隠れる場所のないところでは不安が生じる。そのため、ケージは犬にとって外敵から襲われる心配のない安全な場所となる。躾の行き届いた犬ならば、寝るときには自らケージに入っていく。

『日本列島の科学』

力武常次『日本列島の科学』(東海大学出版会,1978)を読む。
先日読んだ『なぜ磁石は北をさす』の著者であり、著者自身も「岩石屋」「地球物理屋」という表現を用いているが、鉱物学や地質学、岩石学というアプローチではなく、古地磁気学の立場から、プレートテクトニクスの解明のあらましが紹介されている。学術的な説明だけでなく、著者自身の過去の体験や学者の人物評なども入ってくるので、飽きることなく読むことができた。

現在は筑波にある国立防災科学技術センターの観測施設が岩槻にあったとの紹介が興味深かった。国立研究開発法人産業技術総合研究所のホームページによると、「埼玉県岩槻市の地下3500mから採取したボーリング試料について最新の手法で解析を行った結果、この岩石が、日本で最も大きい断層であり、一部が活断層である中央構造線のごく近傍(およそ500m以内)で変形した特殊な岩石(マイロナイト)であることが明らかとなり、関東平野の地下深部の中央構造線の位置を特定することができた」と説明されている。

円周40,000kmの大きさを誇る地球の岩石やプレートの動きを解明する施設が、自転車で行ける距離の観測所で研究されていたということが何よりも驚きであった。

 

『迷惑メール やって良いこと悪いこと』

須藤慎一『迷惑メール やって良いこと悪いこと』(有限会社源,2012)を読む。
スマホこそ出始めていたが、まだメールがネット上のコミュニケーションの主流であった頃の話である。業者による迷惑メールの手法や、迷惑メールの対処法、迷惑メールフィルターなどが丁寧に紹介されている。もともと日経BPnoサイトで連載されていた内容なので、するすると読むことができた。

私自身が、昨年の今頃、クレジットカード会社からの偽メールに騙され、フィッシングサイトに登録してしまったので、10数年前の話として片付けられない。

『夜は短し歩けよ乙女』

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川書店,2006)を少しだけ読む。
京都を舞台にした小説で、小説世界に語り手が顔を出し、語り手の男性視点なのか登場人物の女性視点なのか、頻繁に入れ替わるので非常に読みにくい。
私はファンタジー小説というのは大の苦手である。そもそも聖書や古事記といった神話も嫌いである。なぜ、作者の独自の世界観に付き合わなければいけないのか。