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「北京 大気汚染深刻」

本日の東京新聞朝刊に、北京市内でPM2.5による深刻な大気汚染の模様が報じられていた。
PMとは「Particulate Matter(粒子状物質)」の頭文字をとったもので、工場や自動車、船舶、航空機などから排出されたばい煙や粉じん、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染の原因となる粒子状の物質のことである。2.5とは直径2.5μm(1μm(マイクロメートル)=1mmの1000分の1)を指し、髪の毛の太さの30分の1の大きさ以下の非常に小さな粒子のことである。

昨日も書いたが、中国は無尽蔵といって良いほど石炭が産出されるので、石炭の燃焼の際に生じる有害物質が大気中で光やオゾンと反応し、PM2.5が生成される。PM2.5は、粒子の大きさが非常に小さいため、肺の奥深くにまで入り込みやすく、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患などのリスクを上昇させるものである。

記事には触れられていないが、こうした大気汚染は国境などなく、隣国の平壌やソウルでも深刻な被害をもたらしている。古い工場や発電所で石炭を燃やすために、有害物質が垂れ流しとなってしまう。

「地熱発電10年で4倍」

本日の東京新聞夕刊に、日本の地熱発電所が東日本大震災以降4倍に増えたとの記事が掲載されていた。
授業の復習になるが、地熱発電は字の通り、地中の高温の熱気でタービンを回して発電する仕組みである。そして、地中に熱が発生するためには膨大な圧力が必要である。そのため地熱発電は、プレートが動く境目にあたる新期造山帯でしか稼働することができない。地熱発電の割合が多い国を挙げてみると、アイスランド(27%)、フィリピン(15%)、ニュージーランド(14%)となっている。アイスランドはギャオと呼ばれる海嶺が地表に顔を出した島であり、豊富な地熱エネルギーを有した国である。また、アルプス=ヒマラヤ造山帯にあるトルコも近年地熱発電の開発が著しい。

日本も4枚のプレートがぶつかる火山・地震大国であり、地熱発電にうってつけの場所に位置する。中学校の日本地理にも登場する、日本最大の地熱発電所である大分の八丁原発電所は、約37000戸の家庭の電力量に相当する11万kWの電力を生み出している。小規模発電所が多いとのことだが、建設コストも高いので、地道にコツコツと増設を目指したい。

ではいったい、なぜこれほど鼻息高く語るのかと言えば、実は10年ほど前に、秋田大学理工学部の通信教育で地質エネルギーに関する講座を受講したからだ。秋田大学には国産資源学部があり、石油や天然ガス、レアメタルなどの地質工学の分野では、旧帝大に見劣りしないほどの研究が行われている。
私も関心は高かったのだが、テキストがあまりに訳分からず、大きい声では言えないが、受講はしたもののレポート提出には至らず、満期除籍となってしまった。地球科学を勉強するには、最低限高校レベルの微積分の知識が必要だと反省した次第である。

来年度数Ⅲを選択する生徒は是非、地質科学の分野も将来の選択肢に入れてほしい。

「脱石炭 46カ国・地域合意 日米中印は不参加」

本日の東京新聞朝刊より。
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議で、石炭火力発電の段階的廃止や新規に建設しないことで、先進国では2030年代に、世界全体では2040年代に廃止することで合意したということだ。COP26には100カ国以上の国・地域が参加しており、全体でどれくらいの賛同を集めたのかは不明だが、「石炭火力発電が地球の気温上昇の最大要因」だとのメッセージはしっかりと受け止めたい。

石炭は主に古生代の植物が地中深くに埋没し、地熱や地圧を受けて生成した有機物である。古期造山帯で多く産出されるが、それ以外の地域からも産出し、開発途上国の電力エネルギーを支えている。しかし、石炭は植物由来のため、燃焼すると二酸化炭素だけでなく、大気汚染の原因となる窒素酸化物や硫黄酸化物が必ず排出される。

日本では現在も火力発電所の建設が進んでおり、昨年2020年の6月にも広島県竹原市で世界最高水準の高効率な火力発電所が運転を開始している。日本がなぜ石炭にこだわるかというと、石炭はオーストラリアから安価で安定して輸入できるのに対し、原子力発電は国内世論の批判に晒され、また天然ガスは輸入ルートが不透明であるためだ。

太陽光や地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーの技術開発、それらの普及に向けた国家戦略に異論はない。欧州の先進国は、安定陸塊で地震が全くないので、原発への依存度も高く、天然ガスの供給ルートが安定しているため、容易に脱原発を宣言できる。しかし、アフリカや中米の国はまだまだ石炭に頼らざるを得ないのが現状である。

地球温暖化に逆行するという意見もあるが、私は、今回の脱石炭の合意に加わることができない開発途上国向けに、日本の高効率な石炭火力発電の技術を活用し、非効率な石炭火力発電所をリプレイスするべきだと考える。地球温暖化対策は先進国を中心に議論されているが、貧困に喘ぐアフリカや中米諸国では安定したエネルギーが不可欠である。21世紀半ばを目処に、開発途上国の経済発展を支えるという目的に限って、石炭火力発電の研究を進めていくことが必要である。

「ロシア・ベラルーシ統合加速」

本日の東京新聞に、ロシアのプーチン大統領とベラルーシのルカシェンコ大統領の間で、両国の経済や軍事面の統合を加速させる合意ができたとの記事が掲載されていた。
ベラルーシといってもピンと来ない生徒が大半であろう。両国ともロシア正教会であり、ベラルーシ語はロシア語の方言ようなもので、文字も文法体系もほぼ同じである。また両国とも独裁的な大統領が長期にわたって権勢を保っている。

ベラルーシとロシアが統合したとしても何ら異論はないが、ウクライナ情勢に及ぼす影響が大きく、反ロシア感情が強いウクライナが危機感を募らせるであろう。ウクライナを守る上では、ベラルーシの統合は地政学的なバランスを崩す要因となろう。

「AIが果樹農家 お助け」

本日の東京新聞朝刊に、スマホのアプリやAIを活用したスマート農業の実例が紹介されていた。農薬の投入や収穫時期の見極めが難しい野菜や果樹栽培などで、豊富なデータを活用した効率的な収穫を目指すという実験である。こうしたスマート農業はオランダが世界の最先端を行っているが、日本の技術もなかなかのものである。

これからの農業は、土や虫、肥料といったアナログなものから、リモートでデータを活用したデジタルなものへと移行していくのであろう。さあ、皆さんこの時流をどう考えますか。