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本日の東京新聞の精神科医斎藤学氏のコラムが興味をひいた。斎藤氏は高みに立って物を言う人物であまり好きではないが、下記の論は正鵠を得ている。

ここのところ日本社会は上流と下流に分極化しているそうだが、もっともあからさまな「格差社会」は政界だ。世間では通用しそうもない素朴なアナクロ中年が首相をつとめられるのもそのせいで、要するに人材払底ということではないか。その男は力み返って「戦後レジームの脱却」などと言っている。この人、妙に真面目で「祖父さんの志」を継ぐなどと言っているから怖い。
この祖父さんこそ戦前から続く日本の暗い部分を戦後社会に混入させた男だ。防衛庁を防衛省にし、自衛隊は軍隊にする。教育基本法は改定を重ねて教育勅語にまで持って行く。そういうことを目論む連中が一定数いて、現首相のような「半わかり」を担ぐのだ。

小渕首相の在任時も「真空総理」などと揶揄されたが、ブッシュ米国大統領の背後にいるネオコンや戦前の天皇の勅命を錦の旗にした軍部独走体制も同じで、訳の分からないトップの影に潜って蠢く集団というのが一番気持ちが悪い。

『軍事同盟—日米安保条約』

山本皓一・松本利秋『軍事同盟—日米安保条約』(クレスト社 1996)を読む。
長い間本棚に眠っていた本であるが、普天間基地移転の問題が浮上している今、もう一度沖縄基地問題を頭の中で整理したいと手に取ってみた。日米安保条約の条文を紹介しながら、日米安保と日米地域協定に縛られる沖縄住民と在日米軍の日常生活を写真を交えて描く。改めて日米安保を読み返す良い機会となった。
ニュースなどで何気なく「キャンプ・ハンセン」や「キャンプ・シュワブ」といった名前を聞くが、「ハンセン」や「シュワブ」という名は、沖縄の土地の名前ではなく、太平洋戦争時の沖縄攻略の戦功者の名前であったことを知った。沖縄の置かれている状況を象徴している。リポートをまとめた松本氏は、日米の二国間の安全保障問題として捉えるのではなく、米軍の世界—アジア展開の意図と軍事の実際から考えていく必要を説く。

本日の東京新聞夕刊で、カーター元大統領のコメントが記事になっていた。カーター元大統領は、現ブッシュ政権に対して、「米国の根本的な価値観を完全にひっくり返し、ニクソン、レーガン、(父親の)ブッシュら歴代大統領が築いた政策から急速に離脱した」と批評し、「世界に害毒をまき散らした史上最悪の政権」と痛烈にこき下ろしたそうだ。さらにブレア英首相に対しても「嫌悪感を抱かせるほどブッシュ大統領に追随した」と述べ、「ブッシュ大統領の浅はかなイラク政策を一貫して支持したばかりに、世界に大きな悲劇をもたらした」と酷評したとのことである。では、何の根拠も信念もないまま米国を盲信する小泉前総理、阿倍現総理の責任は果たしていかほどなのか。

「なんとなく改憲?」

本日の東京新聞夕刊に、作家高村薫さんの「なんとなく改憲?」と題したコラムが載っていた。
憲法は国民が主権者であることを保証したものであるで、改憲の権利も国民全体が握っていると述べる。しかし、一票の格差を放置した上で、米国に突き動かされた一部の議員の勢力だけで安易に憲法を変えることができる今回の国民投票法のからくりを批判する。

憲法は私たちとともにあり、時代や社会とともにあるのだから、私たちが欲すれば、変えることはできる。しかし私たちには、いま憲法を変えるような理由があるか。アメリカと一心同体にならなければ困るような状況が、どこかにあるか。阿倍政権は、美しい国を連呼するだけで、国民のために憲法改正を急ぐべきことの合理的な説明をしていない。そういう政権にそもそも憲法をいじる資格はない。

国民投票法案

本日の東京新聞朝刊に、政府が憲法改正の手続きを定める国民投票法案の成立の目処が立ったことに伴い、小・中・高校で主権者としての政治参加の重要性について理解させる「主権者教育」を充実させる方針を固めたとの記事が載っていた。
政府は、選挙権を20歳以上と定める公職選挙法を「18歳以上」に引き下げる改正案を提出するとのことである。選挙権が18歳以上に引き下げられれば、高校在学中に選挙権が行使できる生徒が出てくるため、小・中学校の社会や高校の「現代社会」「政治・経済」での教育内容を充実させ、早い段階から主権者意識を高める教育を目指すという。

ここ10数年、少年法や児童福祉法など18歳、19歳の少年少女の「保護」が取り払われ、義務や罰則など大人と同じ論理が導入されつつある。しかし、一方で選挙権は20歳以上に固定されたままで、権利と義務のバランスを著しく欠いていた状況が続いていた。国民投票法案云々の流れを全く抜きにして考えるに、いたずらな教育に対する政治介入をもたらさない限りは歓迎すべきことであると思う。

東京都知事選

本日東京都知事選の立候補者が告示された。東京新聞では、3選を目指す現職石原真太郎氏と、前宮城県知事浅野史郎氏、共産党推薦吉田万三氏、建築家黒川紀章氏、ドクター中松氏ら4人の新人候補との対決がクローズアップされている。しかし、実際の選挙には泡沫候補を含めて14人も名を連ねているのだが、マスコミからは蚊帳の外に置かれている。
しかし、「その他」の中に、『僕の高校退学宣言』の著書で有名(?)な外山恒一氏が立候補していた。90年代半ば頃は新左翼崩れのアナーキスト系活動家と思っていたが、ホームページを卒読する限り、現在では国家権力に断固抗するファシストを目指すということだ。現職石原真太郎氏が「東京から日本を変える」とスロガーンにしているが、もし万が一外山氏が都知事になったら、彼こそ確実に東京は変えてしまうであろう。
果たしてこの先、一体、彼に何人の人たちが賛同の意を表明するのか注目していきたい。

□ 前衛政治家・外山恒一ブログ □