大学短大専門学校案内」カテゴリーアーカイブ

パンフレット研究:日本獣医生命科学大学

日本獣医生命科学大学(2014年度版)を読む。
聞いたことがない大学名だったので、近年新設された大学かと思いきや、5年前に校名を変更した旧日本獣医畜産大学であった。1881年に東京・小石川に開校した日本最初の私立獣医学校であり、1937年に当時東京の郊外であったJR武蔵境駅周辺にキャンパスを移している。戦後、学校法人「日本医科大学」と合併し、今年で創立132年を数える伝統大学である。現在では獣医学科と2005年に開設された獣医保健看護学科からなる獣医学部と、畜産学科から名称を変更した動物科学科、畜産食品工学科から名称変更した食品科学科からなる応用生命科学部の2学部で構成されている。

安定した人気を保っている大学のため、就職や資格、大学周辺の環境といった紹介はほとんどなく、4学科でのミッションや学びのポイント、カリキュラム、研究室の紹介が隙間なく埋められている。気楽に読み飛ばすようなページがなく、かなり読み応えのある内容であった。
4学科もあるが、やはり大学の中心は獣医学部獣医学科であり、2013年度入試では、推薦入試で3.7倍、センター試験利用入試では18.7倍、一般入試では16.5倍、学士入学でも10.0倍となっている。獣医学部というと動物病院の医者を育てるための大学だと捉えていたが、「生物多様性の保全」や鳥インフルエンザなどの感染菌、発達心理学の視点からの人と動物の相互作用など、その対象は動物というカテゴリーを大きく越えた内容となっている。
東京近郊には、日本獣医生命科学大学の他は、麻布大学と日大生物資源科学部獣医学科、北里大学の3つの私大しかなく、日本獣医生命科学大学の偏差値が一番高い。

パンフレット研究:日本保健医療大学

日本保健医療大学のパンフレット(2014)を読む。
埼玉県幸手市の廃校となった小学校の校舎を改築して2010年に開学した、保健医療学部看護学科のみの単科大学である。ちょうど校舎の真ん前にある武道館に通っていたので、開学を巡った混乱をよく記憶している。
開学して4年目を迎えるのに、未だにパンフレットは開学前の青写真の域を出ていない。学長の挨拶文の1行もなく、実習先の病院もぼかした写真だけで名前はなく、在校生やサークル活動の紹介も全くない。

また、医学部や付属病院もないのに、学費はべらぼうに高く、4年間で6,980,000万円である。この数字もスーパーの安売りみたいで印象は悪い。ただし奨学金制度が充実しており、3分の2近くの学生が最大270万円の奨学金が受けられ、この奨学金も提携グループの病院に4年間勤務すると返済が全額免除される仕組みになっている。

  • 勤務地の希望は伺いますが、原則として勤務する病院等については必ずしも御要望に応えることができない場合があります。
  • いつも笑顔で愚痴不平を言わず患者さんと良好なコミュニケーションのとれる人が条件です。
  • 途中で病院を退職する場合は、残金を全額直ちに返済しなくてはならないので、それが可能な保証人が必要です

具体的な勤務地や病院名が一切記載されておらず、上記の条件をつきつけられるというのはかなり大きな負担であろう。

国家試験取得のための大学なのでカリキュラムはありきたりなものとなっている。1年生に生物、物理、化学の3科目を必修科目として課しているのはよい。ただし基礎系科目の選択科目の一つに「囲碁の文化と思考力開発」という珍妙な授業が置かれているのが気になった。これはこれで面白そうなのだが、果たして受講生がいるのであろうか。

また、底辺大学にありがちな入試概要も掲載されており、AO入試は8月の後半から10回も実施されている。また評定平均値の基準のない推薦入試が5回、さらに1科目入試の一般入試も計7回実施される。これに加えてセンター試験利用入試が4回である。さらに、願書の送付が間に合わない可能性がある時は、事前に大学事務局に連絡の上、当日試験会場に試験開始1時間前までに出願書類一式を持参すれば、その場で受験票を交付し、受験が可能であるとのこと。大学側の親切な対応とみてよいのだろうか。

唯一興味をひいたのが、大学を卒業した看護師の卒業生数の増加のグラフであった。1997年には大学卒業の看護師は1,327人しかいなかったのが、右肩上がりで上昇し、2012年には14,145人と10倍以上も増加している。

パンフレットに知っている卒業生の顔が載っているかなと思っていたが、期待はずれであった。幸手市もどえらいお荷物を抱えてしまったものである。

『SELF BRAND 2014』

本屋で配布している大学案内の無料広報誌『SELF BRAND 2014』(FROMPAGE 2014)を読んだ。
昨年同様、大学の広告ページのキャッチコピーや建学の言葉などを抜き書きしてみたい。

京都大学:学而不厭 There is no end to learning
東北大学:三番目に設立された帝国大学として 研究第一 門戸開放 実学尊重
明治大学:世界へー「個」を強め、世界をつなぎ、未来へー 権利自由・独立自治
名古屋大学:勇気ある知識人 世界の基幹総合大学として、各分野の先頭を走る人材を輩出。
中京大学:新国際英語学部 それは、世界につながる3専攻制。
大阪医科大学:80余年の伝統と、革新の医学教育環境。
京都産業大学:型破りな挑戦を続けて 2015年、創立50周年。
立命館大学:+R 未来を生み出す人になる。
立命館アジア太平洋大学:世界に貢献したいと願う若者が全世界から集まる大学
上智大学×南山大学:カトリックが結ぶ、半世紀の絆。
名城大学:可能性を超えろ。
愛知工業大学:四年後、君はきっともっと、強くなっている。
東京理科大学:科学に立ち止まるヒマはない。
中央大学:世界の「中央」へ。
早稲田大学:日本の早稲田から、世界のWASEDAへ
同志社大学:もっと世界へ、もっと日本へ。
首都大学東京:考えるとは
関西学院大学:世界市民を育む、学びがある。 実践型“世界市民”育成プログラムがスタート
神戸大学:真摯・自由・協同
甲南大学:キミの夢へ、ともに歩む。 With KONAN
日本女子大学:あたらしいあなたをみつける大学
一橋大学:知と業(わざ)のフロンティア
神奈川大学:横浜で学ぶ、湘南で学ぶ。
福岡教育大学:子どもたちの笑顔が、「先生」の幸せです。
北海学園大学・北海商科大学:北の大地に128年の歴史。
千歳科学技術大学:未来を創る、科学を学ぶ
岩手医科大学:医療人たる前に誠の人間たれ
東北工業大学:創造から統合へ。工学とライフデザイン学の融合で、東北工業大学は進化する
茨城大学:知的好奇心をもって挑戦しよう。
埼玉大学:日本の未来、世界の舞台へ翔こう! 「現代の教養」を身につけた、グローバル人材の育成へ
女子栄養大学:管理栄養士国家試験合格者数226名合格率97% 臨床検査技師国家試験合格者数47名 合格率98% やっぱり女子栄養大学です。
聖徳大学:保育士採用数7年連続全国1位 幼稚園教員採用数全国3位 公立小学校教員採用試験合格者数67名 公立保育士採用試験合格者数66名 管理栄養士国家試験平均合格率84.5%
青山学院大学:ともに学び、探究し、世界を切り拓く
國學院大學:もっと日本を。もっと世界へ。
駒澤大学:予習できない出逢いがある。
昭和女子大学:地域とつながり、世界に広がる。
帝京大学:一人ひとりの、「自分流」が見つかる
東京家政大学:専門職に強い 職業人養成132年
東京歯科大学:19世紀から21世紀へ、そして未来を拓く
東京農業大学:その力はこれからの「食」を牽引する。
法政大学:(大内元総長の「われらの願い」)
     一、願わくは、わが国の独立を負担するに足る自信ある独立自由な人格を作りたい。
     一、願わくは、学問を通じて世界のヒューマニティの昂揚に役立つ精神を振作したい。
     一、願わくは、空理を語らず日本人の社会生活の向上発展のために、たとえ一石一木でも必ず加えるような有用な人物を作りたい。
武蔵野美術大学:(青みがかったグラデーションの脇に)この気持ちを、かたちにする。
立教大学:流れに乗る能力よりも、流されない知力を。
鎌倉女子大学:あなたの想いを未来へつなぐ
横浜市立大学:教養を身につけ、国際性を磨く。
新潟大学:新潟から世界へ続く道がある
富山県立大学:幸せは工学が、つくる。
常葉大学:はじまり。あたらしいトコハ。
滋賀大学:湖国から世界へ 素顔で学ぶ。素直に生きる。
大阪人間科学大学:「人」を支えるという覚悟を。社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士、視能訓練士、保育士、幼稚園教諭、心理士、言語聴覚士になりたい方へ。
関西福祉科学大学:人の幸せを願う福祉科学を学ぼう
大和大学:君を変える。キミは変わる。
広島修道大学:世界を学ぶ。地域で生きる。
福山市立大学:知は明日を開く
久留米大学:自由と自律が“想い”を実現する。
長崎県立大学:未来の価値の創造のために人、地域、そして学問と、向き合うことから始めよう。
熊本学園大学:進め。
河合塾:キミはただ、走り出すだけでいい。 ひとつ上が、見えてくる。
九州大学:知の新世紀を拓く
福岡大学:総合大学に入るということはたくさんの才能と人生がつながるということです。
東京大学:「世界を担う知の拠点」へ

ひたすら書き連ねてきたが、高校3年生という狭い層をターゲットとしているためか、どの大学のキャッチコピーも似たり寄ったりとなる。旧帝大はどこも知識や知性を宣伝文句にしている。早稲田や同志社、埼玉大などの総合大学では「日本と世界」「地域と世界」といった文系でも理系でも使える当たり障りのない文句となっている。その他「未来を開く」「自分を変える」といった文句も高校生には届くのであろう。国家資格の合格者数を全面に打ち出す宣伝や、銀行のローンのチラシとそっくりの奨学金の充実を謳う大学も少なくない。
また、10数語の短い文なのに、句読点がしっかりと用いられていることに興味を感じた。これも大学のイメージを伝える広告会社のテクニックなのだろう。

パンフレット研究:東京工芸大学

大学名の通り、工学部と芸術学部の2学部からなる。1923年に設立された小西写真専門学校に始まる、創立90年を迎える伝統校である。現在ではメディア画像学科、生命環境化学科、建築学科、コンピュータ応用学科、電子機械学科からなる工学部と、写真学科、映像学科、デザイン学科、インタラクティブメディア学科、アニメーション学科、ゲーム学科、マンガ学科からなる芸術学部で構成される。工学部は4年間厚木キャンパスで、芸術学部は1・2年生は厚木で、3・4年生は中野キャンパスで学ぶ。元来が写真専門学校であり、写真という工業技術と芸術領域の2方面を学ぶ特色ある

パンフレット研究:日本大学生産工学部

日本大学生産工学部のパンフレットをじっくりと読んだ。
学部の全体パンフレットに加え、女子高生向けのパンフレットや保護者向けのパンフレット、就職者の全リストなども作成されている。
生産工学部というと千葉の方にある、理工学部「じゃない」方というイメージしかなかったが、パンフレットを読んで理工学部とは異なる方向性を持った学部ということが理解できた。
日本大学理工学部の工業経営学科が1957年に千葉県習志野市に移転したことから始まる。1958年には工業経営学科をさらに工経・土木・建築・機械・電気・工化の6コースに組み分けている。さらに、1965年には新たに津田沼に、工業経営学科を母胎として、機械・土木・建築・工業化学・管理の5学科からなる第一工学部として移転・開設されている。現在は機械、電気電子、土木、建築、応用分子化学、マネジメント工学、数理情報工学、環境安全工学、創生デザインの9学科で構成されている。
大学というよりも、工業高専のような趣の学校で、研究よりも教育にシフトし、工業経営や安全管理といった現場の管理技術者の育成に重点が置かれている。そのため、大学院への進学者は多くはないが、中小含めほぼ100%の就職率を誇っている。工業高校出身者もほとんどいない。普通科高校卒業生に対し、4年間で管理点検や保守整備技術を身につけさせ、大手の系列・下請け企業に就職させることに得意な大学である。先端の研究環境は揃っていないが、カリキュラムやインターンシップ、キャンパス環境含め、ものづくり現場での「エンジニア」養成ということに特化されているので、手を動かすことが好きな理系の生徒にとっては選択肢の一つとなるであろう。