「古い物 ねじ伏せる力を」

本日の東京新聞夕刊に、芥川賞選考委員を辞任した作家黒井千次氏のインタビュー記事が掲載されていた。
黒井氏は芥川賞について次のように述べる。

芥川賞の場合、選考する側は年齢やキャリアが候補者よりも上で、どちらかといえば古い世界の人が多い。新しい物を新しくない人が選ぶ。そこが面白いと僕は思う。新しい物を新しい人が選ぶのとは違い、新しい物が古い考えなり存在なりをねじ伏せて出てくるわけです。それこそが本当の力ある新しさだと思う。

また、候補作を読んで「どこに身を置いて書いているのか鮮明ではない」と感じることも多くなり、次のように述べている。

主人公が一人暮らしでアルバイトをするような緩い生活環境が描かれた作品が多い。そこで何かのっぴきならないことが起こるわけではない。職場でも家庭でもいいが、生活の場がその人にとって大事なものとしか描かれていない。物足りないなと感じることが増えました。社会が緩く「ニート化」しているせいでしょうか。

確かに、ここ最近の芥川賞を読んでみると、国家や社会、生死の境、人間存在はほとんど描かれない。表現されるのは、「半径5メートル」の生活の中の違和感だらけである。そしてその違和感を突き詰め、純度高く描く作品のみが称されている気がする。

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